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Tuesday, June 30, 2020

「のどかの宅急便」:ひとまち結び - 新公民連携最前線

2011年に北九州市小倉で産声を上げた「リノベーションスクール」は、市街地にある実際の空き物件(遊休不動産)を対象に、全国から集まった受講者たちが「ユニット」とよばれる7、8人程度のチームを組んで、まちの未来を考える取り組みです。リノベーションの事業プランを練り上げ、最終日に物件のオーナーに提案し、実事業化をめざします。ほぼそのまま実現したものもあれば、かたちを変えてスタートしたもの、さまざまな理由によって実現に至らなかったものもあります。けれどもすべてが実際のまち、建物、オーナーを舞台としたもので、それは同時に日本のどのまちにも、あなたの住むまちにもつながる現代のおとぎ話でもあるのです。このコラムでは、そのなかのごくわずかですが、ぼくの心に残っている物語をお伝えしていきます。(編集部注:タイトルにある「宅急便」はヤマトホールディングスの登録商標です)

 「リノベーションスクール」は、いまでは全国70都市以上に広がっています。そのほとんどが過疎や高齢化、空き家に苦しむ地方都市で、これらのまちは問題点や解決すべきテーマが、ある意味典型的でわかりやすく、未来の日本を考える上でも大切な類例となります。それに比べいわゆる「郊外」のまちは一見なんの問題もないように見え、人口ピラミッドや不動産空室率、路線価の変動を見ても、課題がわかりづらく、そもそも住人たちがじぶんのまちに不安や不満すら感じていないことすらあります。「リノベーションまちづくり」的にはむしろぐっと難易度が上がり、目と耳をよおく凝らしながら、気合を入れて取り組まないといけないのです。

 今回の舞台は埼玉県草加市。東京の足立区と接する人口25万人の都市で、江戸時代は日光街道で江戸から二つめの宿場町、草加宿として栄えました。戦後の高度成長期を経て、都市化が進み、現在ではいわゆる「埼玉都民」が多く住むベッドタウンとなりました。公共施設やスーパーも充実し、駅前には繁華街もあります。半分都会と言ってもいい、そんな郊外のまちでいったいどんな楽しい未来が描けるのでしょう。

 対象となる物件は駅から徒歩5分ほどの距離にある、一番通り商店街に建つ小さな木造2階建ての陶器店。なんと戦前から建つ建物です。この商店街はかつての宿場通りでたくさんのお店が軒を連ね、人も車も交通量が多く、通り沿いには新しいマンションもどんどん建っています。最近では若きチャレンジャーたちが通りに面して新しいカフェなどの飲食店、パン屋さんなどを開業する勢いもあり、歩いていてとても楽しい通りです。まちづくりとしてはむしろ成功例といえるでしょう。

 そんな雰囲気のなかで、この陶器店は古くからまちの人たちに親しまれ、道に面した8畳ほどの店舗には所狭しと商品が並べられています。オーナーは80代の女性で、いまも毎朝ひとりで入り口の重いシャッターを開け、義理のお姉さんとともに、まちの変化をやさしく見守るようにお店に立っています。

 オーナーの悩みは、建物わきの狭く急な階段を上って入る1階と同じ広さの2階部分でした。かつては事務所として使っていたものの、長い間空室になっていました。かと言って、誰かに貸して見知らぬ人が年中出入りするのも物騒で不安だし、そもそも建物がかなり古いので貸すこと自体が大丈夫か、ということでした。

 ぼくたちはいつも通り、まずみんなでまちを歩き、さまざまな人に話を聞き、見えづらいけれど必ずある、そのまちの問題点や課題を探り当てることにしました。個人商店の店主たちは下町気質で明るく、ぼくたちがとりとめのない質問をしてもいやな顔ひとつせず話をしてくれました。そして何軒か聞いているうちに共通点があることがわかりました。それはたとえば、昔、2階に住んで1階で商売をしていたけれど、いまは近くのマンションなどに引っ越していて、2階は空いているか、倉庫代わり。後継はいないけれどいまのところまだそんなに困ってないし、あとは誰かがどうにかしてくれるだろう。そんな楽観と諦観のあいだのような感覚をもっていたことです。

 そう思って外へ出て見上げると、古い建物の2階はほとんど空いていることに初めて気がつきました。個人商店の2階というのは、間取り的にも貸しやすいものではないし、何年先まで貸せるかも分からないので市場には出しづらくもあります。オーナーの悩みは、実はこの商店街全体のテーマでもあることがわかりました。そしてこれは、まだ人ごとくらいにしか考えていないほかの店主たちのところにも、近い将来、必ずおとずれる問題でもありました。

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