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Tuesday, April 6, 2021

PlayStation 5をAV機器として楽しみ尽くす、5つのポイント - AV Watch

milanokabar.blogspot.com

比類のないくじ運の無さで定評のある筆者が、なんと3月半ばにPS5の抽選販売に当選した。大手量販店でネット販売が解禁されるくらい供給が安定したのかと思ったものの、4月に入った時点で多少供給は良くなってきているようだが、Amazonなど大手量販店のネット販売はまだ行なわれていない。きっと筆者は当分の間、運から見放されるだろう。

さておき、PS5が届いた以上は目の前の仕事も放り投げてさっそく遊んでみると、とにかく速い!! 起動もロードも速いので実に快適。PS3やPS4/PS4 Proを使っていたときは何故か接続待ちが長いことが多かったPSストアにもすぐアクセスできる。

さっそく、バイオハザード最新作「バイオハザード:ヴィレッジ」の体験版「メイデン」をダウンロードしてプレイしてみたところ、グラフィックの質が大幅に向上して怖さがさらに高まっている。なにより音も今まで以上にサラウンド感が豊かで、臨場感が格段に高まった。

4K Ultra HD Blu-rayなども視聴してみたが、価格が49,980円(税別/ディスクドライブ付きモデル)のプレーヤーとしては十分な実力だと感じた。4K/HDRの映像もSN感や精細感も十分だし、Dolby AtmosやDTS:X対応の音質も低音がなかなかパワフルで迫力のある音だ。

Netflixなど各種動画配信サービスにも対応しているし(こちらとゲームは現在のところ、Dolby Atmos、DTS:Xには非対応)、AV機器として考えても十分にお買い得と言えるモデルだ。

筆者は日常的にオーディオ、AV機器の専用機を使用しているAVライターなので、優秀なゲーム機であるPS5といえども、AV機器としてみてみれば気になる点はいくつかある。ここでは、AV機器の使いこなしのノウハウを活かして、PS5の実力をさらに引き出してみようと思う。

ポイント1:PS5は縦置きが良い? それとも横置き?

これはなかなか悩ましい問題だ。メーカーの製品写真などは縦置きであることが多く、曲面を積極的に活かしたデザインは確かに縦置きが映えるのは確かだ。しかし、縦置き時の高さは390mmほどあり、実物は思ったよりも大きい。多くの人が転倒を心配するのではないかと思う。

念のために説明しておくと、縦置き時は付属のスタンドをネジで本体に固定するため、多少揺らしても倒れるようなことはない。重量もそれなりにあり(約4.5kg)、縦置き時は本体下部に重心がかかるので、十分な安定感はある。小さな子どもや室内飼いのペットがいる家庭では、それなりにケアする必要はあるかもしれないが、あまり心配するようなことはない。

PS5を縦置きしたところ。曲面を活かした形状がよくわかり、見た目もいい

しかし今回、筆者は横置きで設置した。理由はサイズ感がほとんどフルサイズのAV機器のようだったので、なんとなく横置きが正解のように感じたため。横置きは付属のスタンド(縦置き時に使用するものと同じ物)を横置き用に接続部分を回転させて、背面の突起に引っかけるようにして底面の中央付近に取り付ける。

これがどうにも不安定だ。それなりに面積のあるスタンドとはいえ、およそ40cmもあるボディを中央だけで支えているので、見た目にも不安がある。重量バランスも横置きでは左側に片寄るので、そのあたりも気になるところ。なにより、見た目があまり映えない。

PS5を横置きしたところ。形状の面白さはよくわかるが、新鮮味は薄れる感じもある

試しに縦置きと横置きで映像や音に違いがあるかを試してみたが、大きな差はなかった。しっかりとしたラックなどに置いた状態ではどちらでも大きく変わることはないだろう。となると、横置きの方が伸びしろがある。専用スタンドの不安定な設置状態を対策してやれば、多少は差が出るのではないだろうか。

逆に縦置きの場合、しっかりした台に置く以外に手出しがしにくい。見た目に影響が出にくい転倒対策もすぐには思いつかなかった。というわけで筆者は横置きを選んだ。以降の設置対策も横置きでいろいろと試すことにする。最終的な設置方法については、実際の置き場所や状況に合わせて決めてほしい。

ポイント2:AVのノウハウを駆使して、画質と音質の実力をさらに高める

ここからはAV機器の使いこなしとしては定番のテクニックを使って、画質と音質の向上をはかる。まずは電源ケーブルの交換。電源ケーブルの交換について、メーカーは推奨していないが、より質の高いケーブルに交換するので事故などの危険を過度に心配することはないだろう。

実際、画質と音質の向上には、かなり効く。ここでは、手持ちのフルテック製電源ケーブル(生産完了品)を使用しているが、信頼できるメーカーの手頃なもので十分だ。オーディオ向けの製品でも1万円以内のものがあるので、それらがちょうどいいだろう。

用意した電源ケーブル。左が手持ちのフルテック製で、右が付属品。ケーブルの太さがかなり違う。フェライトマグネットなどの対策は筆者によるカスタム

比較は、上述のバイオハザード最新作体験版「メイデン」で行なった。古い地下牢からの脱出を図るという内容で、戦闘はなし。探索をしながら、ゲームの舞台となる場所と新しいグラフィックやサウンドを体験しようという趣向の体験版だ。前述のとおり、体験版ながら、なかなか怖い。

グラフィックの質はかなり向上していて、4Kレンダリングの精細さに加え、HDRで暗部の再現や高輝度の表示もより表現力が高まっている。PS5で新たに実装されたレイトレーシングも採用しているようで、地下牢に置かれたろうそくの灯りや、濡れた壁や床がてらてらと光る感じが不気味だ。

「メイデン」の起動画面。薄暗い地下牢の様子が実に不気味だ
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電源ケーブルを交換してみると、その明るさ感が変わる。輝度のピークが伸び、ろうそくの灯りもより強くなるし、床の濡れた感じもよくわかる。朽ちたレンガの発色もよくなり、細かな色がよりはっきりと出たように感じられる。光の強度が増したことで全体的なコントラスト感もよくなり、グラフィックの精密さがよりよくわかる。ただし、全体に明るくなるので、後で触れるHDRの調整はやり直した方がいいと思う。

音は映像以上に変化があった。SNが改善し、細かな音、かすかな音がより聴き取れるようになった。壁の向こうで何かがうごめいている気配も、より不気味に感じるし、水のしたたる音やちょっとした物音のひとつひとつが明瞭になり、その場にいる感じがよく出る。

そして、牢の扉を開ける音といった大きな音もよりパワフルで迫力のある音になる。操作している自キャラクターの足音でさえ怖く感じるほどだ。PS5ではサラウンド空間の再現もより豊かになっているが、空気感というか音に包まれている感じ、そして、時折横や後ろで何者かの足音が聞こえるなど、その音の方向感もはっきりとわかるようになる。

さらに、オーディオボードも追加してみた。これは外部からの振動を遮断し、機器自体の振動もしっかりと受け止めるためのもの。振動の影響は案外大きく、特に音の改善に効果がある。

ここで使用したのは、タオック製「SUB-HC50C」(実売価格1万6,540円)。木材と鋳鉄粉入りハニカムコアを使っていることが特徴で、異なる素材を組み合わせて振動吸収などの性能を高めている。もちろん、頑丈なラックにPS5を置いて使うなら必要ない。

ラックなどの強度を高めるならば、ホームセンターなどで厚手の板を購入し、適当なサイズにカットしてもらうといい。木材は反りなどで変形しやすいので、木材を細かく砕いて成形したMDF材がおすすめ。スピーカーのエンクロージャーにも使われるこの素材は案外身近に入手できる。

PS5の下にTAOC製のオーディオボードを敷いた。これで、より設置の安定度が増すはずだ

オーディオボードを敷いてみたところ、期待に反してPS5では、あまり効果はなかった。よくよく確かめれば、周囲から聞こえる物音の定位がよくなったような感覚はあるが、大きな差とは言いがたい。原因を考えるならば、やはり付属のスタンドによる不安定な設置が原因だろう。スタンドを装着した中央だけで接地しているので、どうしても四隅が浮いてしまい、安定感に欠けるのではないだろうか。

横置き時の底面側も曲面主体のデザインなので、安定した設置を目指すとなかなか難しく、対策を思いつくにはしばらく時間がかかった。

最終的に思いついたのは「消しゴム」を使う方法。最初はゴム系素材で四隅を支えるのがちょうどいいと考えたわけだが、四隅ともオーディオボードとの高さが異なるので、加工が難しい。だが、消しゴムならばカッターナイフなどで簡単に高さを調節できるし、その気になれば曲目に合わせて加工することも不可能ではない。そして、なにより安い。

文房具店で購入したMONOの消しゴム。理由はPS5と同じ白色だから

購入してきた消しゴムをPS5の四隅に合わせてカットし、オーディオボードとの間に挟んだ。このとき、オーディオボードとPS5の間の長さをほんの少し(1mmくらい)長くするといい。ゴムが重みで変形してしっかりと挟まるし、ゴムの反発力で四隅を支えるので安定感も高まる。見た目はちょっと悪くなってしまったが、安定感は明らかに向上した。

粗忽者の筆者は配線の接続などで、ついついPS5に手を置いてしまうが、不安定なPS5では厳禁。体重を乗せれば簡単に破損するだろう。だが、消しゴムで支えるようにしたところ、上に物を置いたり、体重を乗せてもいいわけではないが、ちょっと手を突いたくらいではグラつかなくなった。

消しゴムを使ってPS5の四隅を支えた状態。少々見た目が気になるのが残念
左側から見たところ。四隅ともオーディオボードとの距離が異なっているのがわかる

これがなかなか効果があった。消しゴムの効果がすごいというよりも、オーディオボードの実力が発揮できたというところだろう。「メイデン」では地下牢の中で何も物音がしないときの静寂感が高まり、空間感も広がった。そして、何者かの足音や獣のようなうめき声など、なにかの音が出たとき、その場からポッと浮かぶように音が定位する。突然の音の出現がかなり怖い。もしPS5を置いているラックが十分な強度を持っているなら、消しゴムの追加だけでも試してみてもいいと思う。

ポイント3:5.1chや7.1ch再生をしている人は、スピーカーの角度を正しく設定しよう

今度はPS5の画質・音質の設定だ。画質については、設定にある「スクリーンとビデオ」で行なうが、基本的にはPS4とほぼ同じだ。HDRの設定やHDR調整も変わらない。HDR設定については別の記事でも紹介しているので、今回は手短に解説する。

HDMI接続では、互いに送受信可能な信号(4K/HDR, 60Hz対応など)を認識するので、そのあたりは基本的には「自動」のままでOKだ。HDR調整はHDR対応の4Kテレビなどを使っている人は必ず調整しよう。ディスプレイの性能に合わせてHDRの最大輝度と最小輝度を調整しておかないと、映像が暗すぎて見づらかったり、明るいシーンが眩しすぎてしまう。

調整は、部屋の明るさをふだんゲームなどをプレイする時と同じにして行なうこと。周囲の明るさによって、自分の目の見え方が変わってしまうからだ。設定から「HDR調整」を選択したら、画面に指示どおりに調整しよう。

「スクリーンとビデオ」の設定画面。「映像出力」の項目にある「HDR調整」を選択する
「HDR調整」の画面。画面の指示に従って明るさを調整する

今回はここからが本題だ。PS5は後で紹介する「Tempest 3Dオーディオ」というヘッドフォン用のバーチャルサラウンド機能が採用されており、これの効果がかなり高い。わざわざAVアンプや複数のスピーカーを置いてサラウンド再生をする必要がなくなってしまうほどだ。とはいえ、すでにサラウンド再生用システムを揃えている人なら、そのシステムを使ってサラウンド再生を楽しみたいのが心情。ヘッドフォン再生と違って、家族や友人などと、みんなで楽しめる点も大きな魅力だ。

設定にある「サウンド」の「音声出力」の項目で、出力機器として「AVアンプ」を選択すると、AVアンプの設定メニューがアクティブになる。そこからの項目がなかなか本格的だ。

チャンネル数の選択(5.1ch/7.1ch)は普通だが、「スピーカーの位置を調整」という画面では、なんと7.1chならば7つのスピーカーの角度を入力できる。この数値を正しく入力したほうが、より精度の高いサラウンド再生ができるようになる。

「サウンド」の設定画面。ここでは、出力機器で接続した機器(AVアンプ、サウンドバーなど)を選び、それぞれの設定を行なう。画面は出力機器を「AVアンプ」とした場合のもの

デフォルト設定では、5.1chあるいは7.1chのスピーカー配置の推奨値が設定されているが、実際にその数値どおりスピーカーを置いている人はあまりいないだろう。部屋の形状や家具の配置などでどうしてもずれてしまうものだ。こうした設定が用意されている以上、推奨値と入力値がずれている場合、そのズレを補正して最適なサラウンド空間を再現できるようにする機能が盛り込まれていると考えていい。そのためサラウンド再生環境を備えていて、この設定を行なわないのはもったいない。

「スピーカーの位置を調整」の画面。センター以外の6つ(5.1chでは4つ)のスピーカーの角度をそれぞれ入力する

スピーカーとの距離は巻き尺などで簡単に測れるものの、角度を調べるのはなかなか難しい。しかし、例えばヤマハ製AVアンプの中級クラス以上のモデルに搭載されている自動音場補正「YPAO」は、3D測定に対応しており、5.1chのスピーカーの角度とトップスピーカーの角度を測ることができる。

筆者はヤマハのAVアンプユーザーなので、その測定値をそのまま入力した。残りは左右のサラウンドバックだ。数学の苦手な筆者だが、角度を測る道具ぐらいは知っている。分度器だ。だが、文房具店にある分度器では正確に測るのは難しい。学校で教師が使う大型のものがあればそれを使えばいいが、どこにでもある物ではない。

A4サイズで印刷した分度器を使って角度を測っているところ。堅い厚紙などに貼って曲がらないようにすると測りやすい

ただパソコンとプリンターを持っているなら、検索エンジンで「分度器 印刷用」などと入力してみれば、分度器の図版が入手できるので、これを印刷すればいい。あとは巻き尺(写真にあるような金物のメジャーが便利)などを使ってスピーカーの角度を測るだけだ。

なお、写真にあるスピーカーの角度の入力値は、筆者の試聴室にあるスピーカー角度の実測値だが、フロント/サラウンド/サラウンドバックの左右の角度がぴったり揃っているのは偶然ではない。物理的にスピーカーの位置を動かして視聴位置からの距離と角度を揃えている。

サラウンド再生のためのスピーカー設置は、部屋や家具によって理想的な位置に置くのは難しいが、左右の距離と角度は揃えた方がいい。サラウンド空間における左右の歪みは案外誰でも気がつくし、音に包まれているような感覚を味わうとき、どうしても違和感が生じやすいのだ。

こうして正しい角度を入力すると、当然ながらサラウンド空間の再現性がより精密になる。スピーカーの距離や角度を調整せず、なんとなく見た目にそれらしい感じで置いた状態で再現できるサラウンド再生の方向感が十文字の四方向だとすれば、距離と角度を調整することで、方向感が八方向に変わる。その距離と角度を測定してPS5に設定してやると十六方向になると思ってくれていい。それくらいに音の定位する位置がはっきりとわかる。

戦争映画などで味方に敵の出現位置を知らせるときに、「3時の方向」といったセリフがあるが、FPS(一人称視点)ゲームを遊んでいるとき、その言い回しを応用している人もいるだろう(そのように方向を示してくれるゲームもある)。きちんとした調整と設定を行なえば、ゲームの表示に頼らず、自分の耳で方向を感じ取れるようになるだろう。

ゲームでは、自分で自由に視点を操作できるので、サラウンドサウンドの移動感をチェックすることができる。音の定位を確認しやすいのは、拍手のようなパチッという感じのパルス音、あるいはザーという感じのホワイトノイズに近い音。パルス音は焚き火のパチパチはじける感じの音、ホワイトノイズは川のせせらぎのような水流が近い。

今回プレイした体験版では、地下牢を抜けた先にある円形のホールがわかりやすい。中央に熾火の照明があり、燃えるような音とともにパチパチした音が混ざっているのだ。

熾火が画面の中央にくるようにカメラアングルを合わせてから、カメラを水平にゆっくりと回してみるといい。熾火の音がシームレスに移動するだろうか? 3時、6時、9時といったわかりやすい方向のとき、きちんと音と方向が合っているか聴いてみよう。その後は2時や5時、10時の方向など、より細かく方向と音が一致しているか試してみてほしい。

そうすると、ある方向になると音がぼんやりしたり、音量が落ちて聞きづらいことがあるかもしれない。そうした状況に気付いた場合は、スピーカー位置の調整をやり直そう。これは部屋のサラウンド再生力をさらに向上させられるチャンスだ。

「バイオハザード:ヴィレッジ」の体験版にある円形のホールのような場所。中央には熾火による照明が吊されている。PS5ユーザーでサラウンド環境がある場合は、ここでサラウンド再生の仕上がりを確認してみよう
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音の定位がより精密に定まるということは、音場のフォーカスが上がるようなもので、その場にいる感覚がさらに明瞭になる。「バイオハザード・ヴィレッジ」体験版の場合はさらに恐怖感が増す。何者かの声が、ただ聞こえるというだけでなく、ギョッとして後ろを振り返ってしまうほどだ。

ドアの開く音や、何かが倒れる音などは、現実でもよく耳にする音なので、そのリアリティーが高まると、本当に部屋の中で何かが倒れたのかと思ってしまう。せっかくのサラウンド再生環境なのだから、しっかりと調整や設定を行なって、よりリアルなサラウンド音響を体験してほしい。

ポイント4:「Tempest 3Dオーディオ」をいろいろなヘッドフォンで試してみた

スピーカーを使ったサラウンド再生は、環境を構築する必要があり、残念ながら誰でも楽しめるものではない。だが安心してほしい。PS5には「Tempest 3Dオーディオ」がある。

ヘッドフォン用のバーチャルサラウンド技術は、PS4でも採用されていたが、PS5では「Tempest 3Dオーディオ」となり、その再現性がさらに向上した。この技術はソニーが音楽向けに推進している「360 Reality Audio」と同じ技術を元にしたもの。前後左右だけでなく、高さ方向も含めた音の定位を実現できる技術だ。

この実力はかなりのもので、性能の高いヘッドフォンやイヤフォンを使えば、ポイント3で紹介したような臨場感あふれるサラウンドをほとんどそん色なく楽しめてしまう。PS5でゲームや映画を楽しむという点では、スピーカーを使ったサラウンドはみんなで一緒に楽しめることくらいしかメリットが思い浮かばない。

この「Tempest 3Dオーディオ」は、基本的にはあらゆるヘッドフォンやイヤフォンで楽しめるものだが、ソニーからは「Tempest 3Dオーディオ」に最適化されたワイヤレスヘッドフォン(PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット)も発売されている。ただし、現時点で、家電量販店などではすでに完売しており、今のところ再発売に関するアナウンスもない。

PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット

ワイヤレスヘッドフォンの快適さは家の中でもありがたいもので、ちょっと飲み物を取りに席を離れるような時でもそのまま動き回れるし、なにより有線ヘッドフォン/イヤフォンの場合、コントローラーのイヤフォンジャックに接続したケーブルが案外うざったい。Bluetoothヘッドフォンやイヤフォンが使えればいいのだが、PS5は非対応。おそらくは遅延を懸念しているためだろう。前述のPULSE 3D ワイヤレスヘッドセットも専用のUSBトランスミッターを使った独自方式となっている。

肝心の純正品は入手できないし、わざわざPS5用のためだけに互換性のあるワイヤレスヘッドフォンを入手するまでもないと思い、ここは有線接続で我慢し、手持ちのイヤフォンで試してみた。

有線接続でも、音質はなかなか良い。PS4の頃からヘッドフォンはコントローラーの備えられたジャックにつなぐ仕組みになっていたが、PS4コントローラーの場合は音質的に少々不満があった。しかし、PS5のコントローラーはなかなかしっかりした音が出る。音声出力のためのアンプなどが良くなっているのだろうし、「Tempest 3Dオーディオ」はPS5の売りのひとつなので、それが低音質では話にならない。いずれにしてもユーザーにはありがたい話だ。

強いて不満点を言えば、ヘッドフォンの音量調整が簡単にできないことくらい。音量はPS5本体のサウンド設定で調整する形で、音量が足りない場合はヘッドフォンアンプなどを併用することになる。コントローラーにポータブルアンプがぶらさがる状況はあまり快適ではないので、能率の高いヘッドフォンやイヤフォンを使う方がいいだろう。

サウンド設定のヘッドフォン用の設定項目。ヘッドフォンやイヤフォン接続時に設定が行なえるようになる

「Tempest 3Dオーディオ」は設定なども簡単で、すぐに使える。「サウンド」設定で「3Dオーディオを有効にする」をオンにするだけだ。初期設定でオンになっているので、ヘッドフォンを接続するだけで使える。

「3Dオーディオを調整」という機能もあるが、先日発表された「360 Reality Audio」のようにスマホなどで耳の写真を撮って最適化を行なうものではなく、5つのモデルから好みに合うものを選ぶだけとシンプル。ゲーム機ということで誰でも簡単に使えるようにしたのだと思う。

「3Dオーディオを調整」の画面。5つのモデルから、耳と同じ高さに聴こえるタイプを選ぶだけ。聴きくらべてみると、確かに音の高さが変わっているのがわかる

さて、実際に手持ちのヘッドフォンやイヤフォンで試してみた。ここでも「バイオハザード:ヴィレッジ」の体験版を使っている。

まずはゼンハイザーの「HD800」。第一印象は音量が小さい。ゲーム側の音量設定を最大値にしても音量が足りない。もともと低音は軽やかな感触だが非力な感じになってしまう。アンプ負荷の大きいハイインピーダンスなモデルなので仕方がない。

しかし、今回試したなかで音場は一番広い。開放型であることが大きな理由だと思うが、サラウンド空間が再現される円形というか球体の大きさ一回り大きくなる。壁の向こうで聴こえる足音もきちんと距離感があるし、広いホールに出たときはその広さが実感できる空間感がある。やはりサラウンド空間の広さでは開放型が有利だ。

続いては、テクニクスのイヤフォン「EAH-TZ700」。このモデルはダイナミック型ドライバー1基のシンプル構成ながらも、独自の設計により驚くほど低音が出る。音質的な実力も高く、能率も良いので、まさに最適と言えそうな組み合わせだ。

試してみるとまさに精密な音場が再現された。音場の広がりそのものはHD800よりもやや狭くなるが、不満となるほどではない。場所の広さ感や壁の向こうの足音との距離感もしっかりとわかる。そして、音の定位が明瞭で方向感もかなり精密だ。このあたりは能率が十分高いので、しっかりと音が出ていることも理由だろう。

なによりも低音が力強く出るので、足音にも迫力があるし、ガシャンと何かが倒れたり、何かが壁をどんどん叩いている音は重量感たっぷり。怖さはもちろんだが、ゲームを存分に味わうには一番好ましかった。

最後はちょっと変わり種のクロスゾーンの「CZ-10」。アコースティックな手法でスピーカーで音を聴いているような感じの音場を実現したモデルだ。手法としては右のイヤフォンの音が左からも聞こえるクロストーク、部屋の反響などの音のディレイなどを独自のユニット構成やハウジング構造の工夫で再現している。

目的は異なるがバーチャルサラウンドに近い発想なので、サラウンド効果が二重になって逆効果かもしれないと思ったが、意外になかなか良好だった。

大きな特徴は前方の音場の奥行きが深くなること。「Tempest 3Dオーディオ」は声など目の前に定位する音は頭内定位ではないが音源は頭の先にある感じでやや近い。しかし、CZ-10だとそれがいい具合に距離ができる。

PS5は接続機器に合わせて自動で音声の出力先を切り替えるので、ヘッドフォンを外せばAVアンプから7.1chサラウンドで音が出て、ヘッドフォンを接続すると「Tempest 3Dオーディオ」に切り替わる。ヘッドフォンを装着してからヘッドフォン端子をコントローラーに接続したら、音の聴こえ方がまるで変わらず、音声出力の切替が上手くいっていないのかと思ったほどだ。この感覚は他のヘッドフォンやイヤフォンでは感じなかった。

目の前から聴こえる声が遠ざかるということはディレイが加わっているということなので、音像がボケてはいないかと注意深く聴いてみると、たしかに少しばかり音像が大きくなる感じはあるが、不要な響きが気になるようなことはない。そのかわり横や後ろの音の定位はやや甘くなる感じはある。これを包囲感とか空気感と解釈すればなかなか良い響きの室内で聴いている感覚になる。

ゲームではよりシャープな定位の方が相性がいいと思うが、映画的に楽しむゲームならばこういう音場感もアリだ。また、音楽や映画ならば、定位の甘さもあまり気にならなかった。上手くいかない前提で試したのだが、これは意外な発見だった。

「Tempest 3Dオーディオ」を試すために使ってヘッドフォン。左側上がゼンハイザーのHD800。左側下がクロスゾーンのCZ-10。右の手前にあるのがテクニクスのEAH-TZ700

いずれも高価なヘッドフォンやイヤフォンばかりで申し訳ないが、おおまかにまとめると開放型では音場感が大きくなる。イヤフォンや密閉型は音場の大きさこそやや劣るが、空間の再現はより精密になると思う。もちろん、ヘッドフォンやイヤフォン自体の音場感や音の定位、情報量などで聴こえ方はそれぞれに変わるが、基本的にその持ち味が3Dオーディオでもそのまま活きると考えて良さそうだ。

唯一気にするべきことは、ハイインピーダンスなものや能率が低めのものなど、ヘッドフォンアンプを併用するべきモデルは荷が重いということ。

ポイント5:120Hzのハイフレームレートをもう少し身近に楽しむ方法

PS5の購入を検討している人は、組み合わせるテレビの買い換えも考えている人も少なくないだろう。将来対応予定の8K表示、対応する薄型テレビと組み合わせれば楽しめる4K/120p(ハイフレームレート対応のソフトが必要)が気になっている人は多いはず。だが、現時点で対応しているのは8KテレビとLG製の4Kテレビなど、ごく少数に限られる。

今春以降のモデルは各社ともに4K/120pなどのHDMI 2.1で規定されている新機能にも対応してくると思うが、発売のアナウンスがあったのはパナソニックの4K液晶のみ。というわけで、筆者自身もあまり急いで買い替えようとは思っていない。薄型テレビやAVアンプなど状況が整ってきたうえで決めようと思う。

だが、しかし。4K/120pを自宅で試してみたいのも事実。可能ならば、120pだけでもいい。そんな風に考えていたときに天啓が降った。「君の家にある東芝の55X910は2K/120p入力に対応しているだろ?」と。そうだった。東芝の薄型テレビは有機ELに限らず、ミドルクラス以上のモデルならば2K/120pに対応していた。これはPCモニターやPC用ゲームのための機能だと思って忘れていたのだ。

問題はPS5で2K/120p出力ができるかどうかだ。ものは試しとやってみた。普通に接続すると4K/60pの信号出力になってしまうので、「スクリーンとビデオ」の「映像出力設定」で1080p出力を選択。強制的に2K表示とした。「映像出力情報」を確認してみると、1,920×1,080だが60Hzとなっている。

「映像出力情報」画面下段にある周波数表示もHDR使用時、未使用時に限らず60Hzまで。ちょっとがっかりしたが、これは4K出力時の周波数なのでまだ絶望するには早い。

「スクリーンとビデオ」の設定にある「映像出力」で解像度を選択。通常は「自動」でいいが、今回は1080p出力を選択
「映像出力情報」の確認画面。ここでは1080pの60Hz表示となっている

そこで120Hzのハイレフレームレート表示に対応しているPS5用ソフトのひとつ「デビルメイクライV スペシャルエディション」を起動してみた。この段階ではまだ1080pの60Hz表示だったのだが、ゲームのオプション画面「グラフィクス」内にある項目で「ハイフレームレート」をオンした。

オプション画面から抜けると、一瞬画面がブラックアウト。「これはいけるかも」と、テレビ側の表示で入力信号を確認してみると、「1,920×1,080」の表示と「120Hz」の表示を確認。PS5は2K/120p出力にも対応することが確認できた。

ゲームのオプション設定で、「ハイフレームレート」をオンにする。レイトレーシングも選択できる
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SDR表示ではあるが、1,920×1,080/120Hzの表示ができていることを確認!
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1080p/60Hz表示だと、HDR表示となっている。このあたりは機種によって挙動が変わる可能性がある
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さっそくゲームをプレイしてみると、ちゃんと“ヌルヌル”動いた! スピーディーなカメラ視点でも映像がパラつくことはないし、動き回りながら敵を倒していても敵の挙動がわかりやすい。これは大満足だ。

画質的にも東芝自慢の「ゲーム超解像」が働いて、低遅延のまま4Kへのアップコンバートを行なわれるため、思ったほどの画質の落差はない。ムービーシーンや視点を静止して遠くの景色を見るとやや甘くなったように感じる程度だ。ゲームのプレイしやすさでは120Hzの方が良好だと感じるほどだった。

もう少し詳しく調べてみると、光の反射をリアルタイムで再現する「レイトレーシング」のオン/オフでもヌルヌル感が変わることがわかった。一番滑らかなのは「レイトレーシング:オフ」。「レイトレーシング:オン(フレームレート優先)」でも十分にヌルヌル感がある。「レイトレーシング:オン(解像度優先)」だと、60Hz表示よりはスムーズだが、ヌルヌル感はちょっと劣るかな、という感じだ。

これはPCゲームなどでも描画負担の大きい処理を減らすと実効的なフレームレートが上がるので、同様の結果だろう。レイトレーシングのオン/オフで映像表現は思いのほか変わるので、「レイトレーシング:オン(フレームレート優先)」がバランス的には良さそう。ヌルヌル感を最優先するなら「レイトレーシング:オフ」だ。

ただ、2K/120p表示では、なぜかHDR表示ができず、SDR表示になっていた。「ハイレフレームレート」をオフにして60Hz表示に戻すと、HDR表示になる。この制限は原因不明。55X910はHDMI 2.1対応というわけでもないし、2K/120p、しかもHDR表示というものがPCの世界でもまだ存在しなかったと思われる頃のモデルなのでそのせいかもしれない。同じ東芝の薄型テレビでも結果は異なるかもしれない。東芝のXシリーズやZシリーズのユーザーは試してみてほしい。ともあれ、55X910でもHDRとのトレードオフになるものの2K/120p表示は可能だとわかった。

ゲーミングPCでは、4K表示やHDR表示よりもハイレフレームレート表示が重視される流れが強いようで、2K解像度で120Hzや144Hzに対応するPC用モニターも発売されている。このことを考えると、120Hz表示を最優先するならば、現時点でも選択肢はさらに広がるし、コスト的にはかなり身近になる。これは多くの人にとって価値のある情報ではないかと自画自賛しておく。120Hz表示のヌルヌル感は家庭用ゲーム中心の人にはなかなか新鮮な感覚なのでぜひ試してみてほしい。

ソフト不足でも十分遊べるPS5。しっかり準備を整え、目当てのゲームを楽しもう

PS5もまだまだ注目のソフトが出揃っている状況ではないし、そもそも供給が安定するにはもう少し時間がかかりそう。とはいえ、ここまでいろいろと遊べたのは予想外だった。もっと手軽で短いレポートのつもりだったのだが、こんな長さになってしまった。それもPS5のポテンシャルの高さがあってのことだろう。

8K出力対応を含めて今後のアップデートによる進化も期待できるし、非常に魅力のあるゲーム機であることがよくわかった。PS5を欲しいと思っている人が、1日も早く無事に定価で入手できることを祈りながら、記事を締めよう。

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