Pages

Thursday, June 24, 2021

「引き継いだものを、若い監督、俳優に伝えられたらいい。僕なりの恩返しです」──役所広司(俳優) - GQ Japan

役所というプロフェッショナル

▲20〜30本は所有しているという腕時計好きの役所広司が選んだのはスプリングドライブを搭載するグランドセイコー。「毎日、今日はどれを着けていこうかなと考えるのも楽しいんです」。

フィルムなのか、デジタルなのか。照明なのか、自然光なのか。たとえば映画館でその違いに気づき、仔細に効果まで説明できる観客は決して多くないだろう。それでもディテールにこだわる制作陣がいて、その思いに応える俳優がいる。話を聞きながら、役所のグランドセイコーに目をやると、肉眼では確認できないような細部や腕時計内部のパーツのひとつひとつにまで手が入っていることが思い起こされる。

そんな徹底した細部へのこだわりは、グランドセイコーのものづくりと俳優・役所広司に通底している。そして、そのこだわりをこれ見よがしに誇示しない美意識も、また。役所という人は、長年使い込まれた大工道具を生き物を愛するように愛する人であり、物や作品にこめられた生きたプロフェッショナリズムに、自然と思いを寄せることができる人である。そして誰よりも彼自身がプロフェッショナルだ。

「俳優って齢を重ねて顔にシワが刻まれていくと、それが武器になる仕事なのです。でも、そのいっぽうで体力はなくなるし、セリフおぼえもどんどん悪くなる(笑)。その悪い流れにどこまで逆らっていけるか。目標になる俳優は世界中にいますが、笠智衆さんのような欲のない佇まいを出せるようになったらいいなとも思いますし、仲代達矢さんのように90歳近くなっても舞台に立つエネルギーにも憧れます。

僕はこれまで人に恵まれてきました。僕から新しい一面を引っ張り出してくれた監督や脚本家がいてくれたからこそ、ここまでやってこられたのだと思います。できることなら、そういった方々から引き継いだものを、若い監督、俳優に伝えられたらいいですね。それが僕なりの恩返しです。まあ、そういっても言葉で簡単に教えられるようなものでもないですから、一緒に仕事をするなかで、なにかしら感じてもらえたらと思っています」

帰り際にも「ありがとうございました!」と大きな声で挨拶をして去っていった役所広司は、インタビューの途中で、「残された時間でなにができるかを考えることが増えてきました」と語った。だが、その目はまるで青年のように爛々と輝いていた。そして、その手首では真新しいグランドセイコーの腕時計が、持ち主の心境にはおかまいなしに正確に時を刻んでいた。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 「引き継いだものを、若い監督、俳優に伝えられたらいい。僕なりの恩返しです」──役所広司(俳優) - GQ Japan )
https://ift.tt/3dc9nZV

No comments:

Post a Comment