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Thursday, June 4, 2020

<揺れる世界>米ハリウッドの映画プロデューサー ジェナ・ミリー 見えない明日 待つしかない:北海道新聞 どうしん電子版 - 北海道新聞

 この窓からブラッド・ピットがTシャツを脱いでる姿が見えたらいいのに…。クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で彼がこんな演技をした地区に私は住んでいるのだが、私を含め誰も外出しなくなってしまった。この辺で撮影するブラッドの姿を見るチャンスもなくなった。何より、映画産業が平常に戻るチャンスはもっと少なくなったのかもしれない。

 私にタランティーノ監督ほどの実績はないが、同じような夢を描いている。大スクリーンで自分の作品を見ることだ。私は10年近く映画を撮り続けている。元々はジャーナリストとして文章を書くのが仕事だったが、それが映画「ゴールデンアーム」につながった。

■夢描いた脚本

 私の高校からの親友、アン・マリー・アリソンは女性腕相撲のチャリティーを始めた。とても楽しく、心温まるイベントだったので、大好きになった。私は、彼女がどうやってお金を集めているか、昼間は医者や弁護士の女性たちが夜は屈強な腕相撲レスラーとなるのを見るのがいかに楽しいか、1本の記事を書いた。記事への反響が大きく、映画の脚本にすることを思い立った。そして、アイデアが映画になる典型的な道のりのように、脚本を携えてスタジオやプロダクションを巡った。

 「この種の映画は作ってないんだ」「女性コメディーはウケないんだ。スポーツに絞っては?」などと言われたり、ただ「No」と言われたことも。確かに女性向けのスポーツコメディーはあまり見たことがない。男性向けならたくさんあるのに。

 そこで私たちは会社を興し、投資家に呼びかけ、スタッフを雇い、昨年夏、オクラホマで5週間にわたって撮影した。役者たちも心血を注ぎ、映画に魂を吹き込んでくれた。編集も終わり、音楽も入れ、あとは映画祭に出品するだけとなった。映画祭は多くのバイヤーが見てくれるので、格好のPRの場だ。だからこそ、今年3月の「サウスバイサウスウエスト映画祭」で上映が決まった時には天にも昇る気持ちだった。プレミア上映に友達や家族を招待し、記者会見をし、ネットフリックスやフールー、アマゾンなどのバイヤーが作品を見て、ラインアップに入れてくれるかもしれないのだ。

 腕相撲レスラーが実演できる会場も借り、レフリーも雇った。ミニポークサンドイッチも注文し、「ゴールデンアーム」と記したタトゥーのシールも作った。役者やプロデューサー、協力者たちの航空券も用意した。私の母は、私の10年に及ぶ努力の成果を目撃しようと、テキサス州アトランタから14時間半ドライブするつもりでいた。

■門戸閉ざされ

 しかし、映画祭の1週間前に事件は起きた。新型コロナウイルスだ。文字通り私たちが呼吸する空気に入り込み、まるで監督の椅子が指一本で折りたたまれるように簡単に、映画祭は吹き飛んだ。上映も記者会見も、映画を見て笑ってくれる観客を見る喜びもなくなった。質疑応答も、スタッフとのハグも、ミニポークサンドイッチもなくなったのだ。

 現在、私たちは自宅待機しながら、事態を見守っている。自分たちの映画もそうだが、バイヤーたちは門戸を閉ざし、エージェントは収入を失い、大手配給会社はスタッフを解雇している。いったいどうしたというのだ。

 アメリカの映画、テレビ産業は250万人を雇用しているが、9万3千社の87%は10人以下の規模という。私のことだ。そして私の友人のことだ。私のいとこも解雇され、友人の舞台は中止され、隣人の映画は公開延期となった。

■尽きない不安

 ハリウッドはブラッド・ピットと彼のTシャツだけで成り立っているわけではない。誰かが彼の脱いだTシャツを拾わなければならないし、誰かが彼にコーヒーを差し出さなければならず、誰かが彼のせりふを書かねばならず、Tシャツを脱いでもかっこよく見えるように誰かが照明を当てなければならない。彼らは、このパンデミックの中、あなたたちにちょっとした息抜きを提供していることに思いをはせてほしい。

 私は夫が働いているので幸運だが、明日は分からない。電話が鳴るたびにどきっとする。彼が解雇されるのではないか? 給料がカットされるのでは? 仕事がなくなっても、ロサンゼルスに住めるのか? 子供たちは学校に戻れるのか? 私はまた書けるのか? 家を出て会議でアイデアを発表できるのか?

 死の恐怖に苦しんでいる人がいるのに、こんな小さな疑問を持つことに罪悪感を覚える。友人は2週間のうちに両親とも亡くした。年老いた母に会えない友人もいれば、元気だったのに感染して17日間入院した友人もいる。彼は回復したが、毎晩不安で、こんな事態が早く過ぎ去ってくれるよう祈り続けている。

 私の隣人が陽性となり、彼女が地下室で12日間隔離されている間、スープを差し入れするなどして手助けした。私たちは毎晩8時に医療従事者に感謝を唱えるようになった。外出時にはマスクをし、食料品店では6フィート(約1・8メートル)離れて立つ、買い物になるべく行かないよう庭のレモンやローズマリーを料理に使う。6歳の息子が外で遊んでいて目をけがした時、縫う必要があったのだが、病院には行かず看護師のいとこに連絡した。彼女は、事態が起きてから何度目かの12時間勤務の最中にもかかわらず、包帯の巻き方をテレビ電話で教えてくれた。

 ロサンゼルスでも多くの死者が出ている。検査が必要だ。答えも必要だ。リーダーシップも必要だ。情報も必要だ。ハリウッドでの仕事に戻りたい。しかし、待つしかない。

 衣装、照明、メークなど一緒に映画を作った人たちのためにも、10年前にチャリティーを始めた私のパートナーのためにも、この映画がうまく行くことを願っている。しかし、今はハッピーエンドになることを願って、待つしかないのだ。(松本悌一訳)=おわり=

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June 04, 2020 at 01:30PM
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