
新型コロナウイルスの影響でさまざまなイベントが相次いで中止になる中、岩手県大船渡市では、震災の犠牲者の供養の思いを込めたサプライズの花火が打ち上げられた。
「被災地の夏に、鎮魂の明かりを絶やしたくない」と、花火を実現するために動いた住民たちを取材した。
被災地の夜空に咲く、大輪の花。
岩手県大船渡市の盛町で、毎年、お盆の時期に街を彩る花火の様子。
新型コロナウイルスに負けずに2020年も、花火を実現できた裏には住民たちの熱い思いがあった。
古内一二(かつじ)さん。
家電の販売店を営んでいて、消防に提出する書類を作ったり近隣住民に許可を取ったり、20年以上準備を中心になって進めている。
古内一二さん
「盛町に恩返ししたいっていうか、盛町のためっていうのは、盛町の人間だから感じないこともないが、みんながみんな思っている」
例年、花火は、この地区の盛川で燈籠流しと合わせて行われている。
しかし、2020年は感染拡大防止のため、燈籠流しは中止に。
一方で、花火については、一部の周辺住民以外に告知をせず、サプライズで開催することが決まった。
古内一二さん
「今年は孫も来ないし、子も来ない。寂しいとみんな思っているんだけどこれは仕方がないよね。その中でも、花火が打ち上げられるっていうのが、少しでもみんなの楽しみになっていただければ」
8月18日、打ち上げ場所に人が入らないようロープを張る作業は、6人の仲間が手伝った。毎年、この力仕事に協力する彼らも、盛町を愛する一員。
手伝った住民は…
「みんなが喜ぶことだと思ってやっています。わたし自身は花火は苦手だが…」
「(この花火は)わたしが小さいころから、物心ついた時にはもうやっていましたからね。(今年花火ができるのは)超うれしい」
8月20日、花火当日は、青空に恵まれた。
花火師たちが、火薬を入れた筒を運び終え、準備は万全。
そこから約500メートル、この花火を誰よりも心待ちにする人がいた。
市内の運送会社の社長、熊谷廣さん。
2020年の花火は、当初、新型コロナウイルの影響で中止が決まりそうになったが、熊谷さんがたった一人で出資することで実現した。
Q「一人で出資は、かなり負担もあると思うが…」
熊谷廣さん
「別にそういうことは考えない。銭の問題じゃない、心の問題」
東日本大震災では、会社の1階が津波で浸水。2階に避難し、間一髪、難を逃れた熊谷さん。
発生直後、大船渡で支援活動をした青森県の自衛隊と、お礼の品を送ったことをきっかけに現在も交流を続けるなど、震災を機にした人と人との絆を大切にしてきた。
『震災の犠牲者への供養の明かりを絶やしたくない』
今回出資を決めたのは、追悼への思いからだった。
熊谷廣さん
「震災で亡くなった人たちは、いま迷っている、海の上を、帰りたくても帰れないでいる。供養、一にも二にも。やっぱり供養してやらないと浮かばれないでしょ」
迎えた午後7時半。
天高く上がった1000発の鎮魂の明かりは、優しく、そして力強く輝く。
偶然花火を見かけた人は
「花火見たらとても楽しい気持ちになりました」
「(今年は)こんなにゆっくり花火を見ることはなかったかな。だから感激しています」
花火実施をけん引した 古内一二さん
「経済的に援助してくれた熊谷社長の話も響いたしね、特別な花火だったね、そういった面では。ずっと思い出に残る花火かもしれないよね、今年は」
1人で出資した 熊谷廣さん(会社の前で)
「まあ素晴らしい、その一言に尽きますね。子供や孫の代がこの先大きくなっても、この世を去った仏に対しての供養の気持ちを忘れずにやっていってほしいと思います」
震災から10年目の夏を彩った、美しい花たち。
咲いては散るそのはかない姿は、住民の胸には消えることなく、かげかえのない記憶として残ったようだ。
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September 08, 2020 at 12:00PM
https://www.fnn.jp/articles/-/82542
サプライズ花火に込めた鎮魂の思い コロナ禍の夏<岩手・大船渡市> - FNNプライムオンライン
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