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Saturday, August 1, 2020

「このゲームで人々を笑わせることができるか」を検証し続けてきた――カオスな手術シミュレーター『Surgeon Simulator 2』開発者インタビュー - IGN JAPAN

これでは即死じゃないか……外科手術の何をシミュレーションしているんだ? 『Surgeon Simulator」と名乗る手術シミュレーターは、手術器具で患者の肉体を破壊したり、切除した臓器を放り投げたり、どう考えてもおかしい手術をさせるゲームプレイを特徴としている。

大事な外科手術でやってはいけないことをする。「私、失敗しかできないので」というほかないゲームデザインは、絶対に笑ってはいけない現場で笑ってしまう体験を多くのプレイヤーにもたらした。あまりにもな手術の様子が話題となり、ゲーマーの間でみるみるうちに広がっていったゲームなのだ。

そんな話題作もさまざまなプラットフォームに展開され、VR化も果たしたあと、ついに続編『Surgeon Simulator 2』が2020年8月27日にリリースされる。

初代の時点で「これ以上手術をめちゃくちゃにできるのか?」と思ったが、開発のBossa Studios(以下、Bossa)による外科手術の限界を突破しようとする試みは止まらない。マルチプレイの導入やクリエイトモードまで実装し、プレイヤーをさらなる混沌に巻き込むつもりだ。

今回、『Surgeon Simulator 2』のシニア・プロデューサー、マーク・ピック氏にメールでインタビューする機会を得た。果たして、患者で遊びたくてたまらないゲームスタジオは、何を考えて続編の開発に挑んだのだろうか?

前作の魅力を保ちつつも挑んだマルチプレイやクリエイトモードの発展

 
マーク・ピック氏

――『Surgeon Simulator 2』のトレーラーを見て、前作のように医師免許を即はく奪され、逮捕されるだろうゲームプレイがより広がっているのがうかがえて笑ってしまいました。

そうですね(笑) 『Surgeon Simulator 2』で行っているような治療は現実では行わないでいただくのが何よりです!

――本当ゲームに留めておいてほしいです(笑) 続編を作るにあたって、チャレンジしたことを教えてください。

新作を作るにあたって、もっとも難しかったのは前作の『Surgeon Simulator』の魅力をそのままに、「マルチプレイやクリエイトモードをどこまで発展させることができるか?」ということでした。

プレイヤーが前作にもっている楽しいイメージを壊すことなく、それを大きく超える作品にしたいと思っていました。そのため、前作のファンに常時プレイテストをしてもらい、彼らのフィードバックをゲームに取り入ながら、前作を作ったゲームジャムチームのメンバーに加え、新メンバーとしてBossaでは得られない経験を積んできたメンバーを入れてゲーム開発を進めてきました。

前作に比べてゲームプレイは拡張されています。「Bossaverse(Bossaの制作したゲームの世界観)」内で、『Surgeon Simulator』や『I am Bread』でも舞台となった「Barnardshire(バーナードシャー)」にゲームを設定し、それらのゲーム内容をイースターエッグ的に散りばめつつ、2020年のリリースにふさわしい新作ゲームとして開発してきました。

前作を引き継いでいるもうひとつの試金石とも言えるのが、シンプルながら「このゲームで人々を笑わせることができるか」というテストです。これは非常に簡単にできるテストですので、開発期間中の3年間、どの開発段階であっても、常に検証してきました。このゲーム開発はテストプレイヤーともどもとても楽しいプロジェクトになりました。

 

――やはり笑いにこだわりが! 今回、最大4人でのマルチプレイが実装されました。マルチプレイがどんなものなのか教えてください。

今回協力プレイを導入しようと思ったきっかけは、『Surgeon Simulator』のプレイヤーが、自分でプレイするのと同じくらい、他人がプレイする様子を楽しんで見ていたことです。

前作がリリースされてからすでに7年が経ちましたが、今でも『Surgeon Simulator』はYouTubeやTwitchで数百万回再生され続けています。その様子を見て「続編で自分のほかに3人の外科医も同時にプレイしたらどうなるだろう」と考えたわけです。

我らが患者、「ボブ」を治療し、健康を取り戻してもらうためにプレイヤー達が協力しあってレベルをクリアする必要があるのはもちろん、いっしょに協力しているはずの外科医が間違ってボブの手足を引っこ抜いてしまったり、事態をとんでもない方向に向かわせてしまったり、前作と同様に動作のコントロールに苦労する様子を見るのはとても楽しいことです。

失敗やカオスがフラストレーションに繋がらず、ただおもしろい要素となるのが『Surgeon Simulator 2』の醍醐味のため、プレイヤーにはオンラインで一緒にプレイし、楽しんで遊んでいただけたらと思っています。もちろん、シングルプレイも楽しいですよ!

――今回は特に、いろんなプレイヤーによるゲーム実況も楽しみになるモードをたくさん入れていますね。前作の『Surgeon Simulator』でもゲーム実況ですごく人気のあったタイトルでした。開発するみなさんは、ゲーム開発においてゲーム実況をどれだけ重視していますか。

『Surgeon Simulator』の成功にはゲーム実況やライブ配信が大きく貢献しており、続編にマルチプレイの要素を入れることにしたのも彼らのおかげです。『Surgeon Simulator 2』の開発にはプレアルファからゲーム実況者達にゲームを体験してもらい、実況がよりおもしろくなるようフィードバックしてもらっています。

たとえば、ゲーム内の1レベルが終了したあと、次のレベルが始まる前に、5秒ほどゲームプレイに全く関係のない簡単なパフォーマンスをする間があるのですが、これはチームメンバーに向けたパフォーマンスとなっています。

我々のゲームはあまり会話や読む要素はなく、動的でともかくドタバタしていますので、特にビデオの実況や生放送には適していると思われます。

 

――また、プレイヤーが自分でステージを作れるBossa Labs作成モードもおもしろそうです! このモードでプレイヤーにどんなステージを作ってほしいですか。また、開発スタッフの皆さんはどんなステージをテストで作ったりしましたか。

このツールの開発はとても楽しかったです。我々は、『Surgeon Simulator』というゲームの扉を開ける「鍵」を、このシリーズを7年前から支えてくれて来たコミュニティにお渡しすることにしたのです。

すでにリリースに向け、開発チームやコミュニティがこのツールを使って、1人プレイ用、協力プレイ用、そして対戦プレイ用にレベルを作成しています。

制作されたステージには、ボブの頭をボールにしたボーリング場や、海賊船、マリオに出てくるようなお化け屋敷、きちんと作動する宇宙船や、「Overcooked」のように患者のボブが次から次に手術台に出ては消えてゆくオリンピック的なものなどがあります。今のところもっとも気に入っているレベルは、ボタンをひとつ押すとドミノ的な連鎖反応が起きるルーブ・ゴールドバーグ(いわゆる「ピタゴラスイッチ」)のような作品です。

このような制作ツールを開発する楽しみは、プレイヤーが一体何を制作するのかまったく見当がつかないことです! 開発を進める際、たいていは通常リリース前に起こるだろうことを把握できるものですが、今回は例外で、まったく予想ができません。リリース後にどのような突拍子もない作品ができるか本当に楽しみにしています。

――今作はシーズンパスを導入しています。リリース後にさまざまなイベントなどを実装していくのだと思うのですが、どんな展開を予定していますか。

『Surgeon Simulator 2』は、リリース後もいろいろな人々にプレイしていただきたいと思っています。そのためにも「Surgeon Simulator」の世界をさらに大きく広め、新しいキャラクターやレベル、ゲームメカニクスなどをリリース後のコンテンツアップデートとして提供していく予定です。

Bossa Labs作成モードでは、すでに「手術」にまったく関係のないレベルが作成されており、そこに新たな小道具やメカニックスを加えることで、さらに驚くような作品を作っていただきたいと思っています。

続編開発に大きな影響を与えたゲーム実況の存在

 

――『Surgeon Simulator 2』の制作を決めたのはいつごろからですか。

『Surgeon Simulator 2』は2017年10月に開発が開始されました。前作のPC版の実況動画などを多くのプレイヤーが楽しんで視聴している様子や、PS4版やSwitch版に加えた協力モードが好評だったため、ずっとマルチプレイの『Surgeon Simulator』続編を開発したいと思っていました。

本作はBossa Studios にとって初の続編になります。以前からスタジオ内で、もし『Surgeon Simulator』の続編を作るのであれば、新しいレベルを加えるだけのリリースを繰り返すようなことはせず、オリジナルを上回るだけでなく、斬新な作品をリリースしたいと話し合ってきました。

そこでゲームにBossa Labs作成モードを加えることで、プレイヤーにもレベルを作成してもらい、作品を共有できるプラットフォームの開発へと繋がっていきました。『Surgeon Simulator』のユーモアはカオスから生み出され、それを共有し合うことで最高のコメディが作り出されるからです。

このゲームを開発するにあたり、まず前作の不器用極まりない物理演算がマルチプレイでも可能かを検証することから始めました。これは思っていたよりも大変なことでしたね! ゲームの主なメカニクスやスタイルのプロトタイプの開発が進められるなか、リード開発者のマーキーがかかりっきりになり、数カ月かけて納得できるものを開発していきました。

――前作の『Surgeon Simulator』から、続編まで7年が経過していますね。あらためてプレイヤーの反響や、続編の希望についてどんなものだったか教えてください。

プレイヤーからは頻繁にこのゲームをマルチプレイでプレイしたいという要望をいただいており、それが続編を作るきっかけになったわけですが、プレイヤーからはもうひとつ、「もっと」いろいろ付け加えてほしいという要望をいただいていました。手術のタイプや、レベルを増やしてほしい、患者のボブにもっと関わりたいなどなどです。続編では、それらすべてが取り入れられています。

どうして人体破壊が笑いになるの?Bossa流のコメディゲームの作り方

 

――あらためてなんですけど、『Surgeon Simulator』の人体破壊しちゃうジョークの質についてうかがってもいいですか? イギリスやアメリカのゲームでしばしば見られる、人体破壊のバイオレンスをジョークとして扱う感覚が、日本ではあまりないんです。そちらの国のテレビや映画、舞台のコメディなどでよく見かけるものなのでしょうか?

新ゲームを開発するにあたり、モンティ・パイソン(※イギリスの世界的に有名なコメディグループ)の映画は大いに参考にさせてもらいました。特に「流血」をドタバタのコメディとして扱う部分を、です。流血や肉体に関するユーモア以外でも、イギリスのコメディには常にダークな部分が付きまとっており、我々の作るゲームに上手くマッチしています。

「外科手術」とは本来なら深刻で、真剣なものですが、施術する際にコントロールできないもどかしさがあると、それがコントラストとなり、コメディとなるわけです。このゲームをプレイしている間、心のどこかで「これを本当に笑っても良いのか?」と問いつつも、ゲームの最終目的はボブを治療して、完治させることにあるわけです。

ですから、最終的にこれはバイオレンスを推奨するものではなく、他人を助けるための平和なゲームなのです!

――な、なるほどー。

『Surgeon Simulator 2』を開発するにあたり、シリーズのほかのゲーム同様、常に「イギリス的」であることを心がけていました。ゲームのキャラクターには、現代の人種のるつぼのイギリスを象徴させながら、従来からのイギリスの小道具や建造物、アートなどがレベルやアートデザインに反映されています。

 

―― いま“Simulator”というジャンルがそのままの意味じゃなくって、ビデオゲームではコメディゲームのジャンルにもなっていますよね。あらためてなんですけども、“Simulator”というジャンルをちょっとパロディにしようとしたきっかけはありますか。

シミュレーターというと、もともと深刻で堅苦しいイメージがずっと付きまとっていました。『Surgeon Simulator』も内容そのものは深刻ですが、逆にそれを大変なものにすることでユーモラスな内容になっています。このタイトルは、堅苦しい内容をもどかしく操作するという意味で、それを象徴できるタイトルだったのではないかと思っています。

――そのほかにも『I am Bread』など、Bossa Studiosはコメディをうまくビデオゲームにしているスタジオだと考えています。現在開発中である『I Am Fish』なども含め、コメディをゲームにする発想や、ゲームデザインのプロセスについて教えてください。

Bossa Studiosでは、数多くの社内ゲームジャムを行っています。スタジオ全体が、通常業務を一旦停止し、チームを組んで新しいゲームのアイデアを2、3日以内に作るのです。

素晴らしいゲームのアイデアはそのようなゲームジャムから生まれています。『Surgeon Simulator』、『I am Bread』、『I Am Fish』はすべてそのゲームジャムから生まれました。また『Surgeon Simulator 2』のレベルやメカニクスもそこでで生まれ、研鑽されてきました。コメディのゲームを開発するにあたり、限られた時間内にアイデアを出し合い、協力しあうゲームジャムのプロセスは非常に適しています。

またゲームジャムは、日ごろの鬱憤を晴らす良い機会でもあり、スタジオ内でもとても楽しい時間となっています。ドタバタしたユーモアを好むスタジオから出てくるアイデアですので、「もしパンをコントロールするとしたら、どうする?」なんて突拍子もない一言がから、真剣にゲームデザインを考える2日間へとつながり、最終的には新しいゲームのコンセプトになるのです!

Bossa Studiosのゲームがユニークなのも、チームにそこまで許容させるスタジオの姿勢があるからこそだと思います。

 

マーク氏のインタビューからは、さらに外科手術がカオスに巻き込まれるゲームプレイが期待できるだろう。『Surgeon Simulator 2』は2020年8月28日、Epic Gamesストアにてリリースを予定している。前作に引き続き、めちゃくちゃにしてしまうゲームプレイを期待するプレイヤーはチェックしてほしい。

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August 02, 2020 at 08:30AM
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