「簡単にフリーになって、自由にやりなよ」とは思わない
宮田大介氏(以下、宮田):「好きなことをやれる」という話で、逆にそれで考えた時に、やっぱり好きなことをやっていくというのは「ラーメン屋じゃなくて、イラストとかキャラクターデザインとかをやっぱりやりたい」となったんですかね。
倉島一幸氏(以下、倉島):そうですね。だから絵本とかも関わらせてもらったんですけど、基本的にお話に絵をつけるのが好きなんですよ。さっきも言っていたように、企画の人に絵を渡してお話を作ってくれてとかっていうのが、すごく楽しいので。
『ウルトラかいじゅう絵本』とかも、作家さん・ライターの方と組んで、そこに絵を当てていくんですけど。僕は物語とか書けないので、そういういろんな人と組んで何かやってみたりとかっていうのを、ゲームに限らずいろいろもっと自由にやっていこうと、なるべくしてますね。
宮田:そこの広がりを広げて、そういった一緒にやっていく機会を増やしていくというところで、やりたい仕事をやれるようにというかたちですね。
倉島:そうですね。はい。
宮田:やっぱりクリエイターとしてやっている方々は、けっこうみんな悩まれるところというか。「やりたい仕事をやりたいけれども、いろんなしがらみがあるし。それで生きていけるのかな?」みたいな話とかは、すごく悩むところじゃないですか。
倉島:僕が思うに「簡単にフリーになって、ポンと今の大きい会社を辞めて、自由にやっちゃいなよ」とは思わないんですよ。
それはそこの、昼間そういう仕事をやって、夜中自由にやるとか。ちょっと足がかりを残しつつやったほうがいいとは思いますよ。
僕の場合は結局、バンッてフリーになっちゃいましたけど。チンクルの2本目の後かな? チンクルの1本目(『もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド』)の後だ。だけど、やっぱりその流れで今までやってきた流れでバンプールさんと「はい、バイバイ」というワケではなくて、2(『いろづきチンクルの恋のバルーントリップ』)もやりつつ。
同時に『王様物語』という木村(祥朗)さんのやっているのもやりつつ、他のお仕事も受けてという時は、病み上がりでしたけれど、あまり寝ないで夜中とかもやってます。
脳の手術したんですけれど、最初のうち、目が霞んでよく見えないんですよ。
宮田:そうなんですね。
倉島:だからドット絵とかも、その時やってましたけど、当てずっぽうでこうやって……(笑)。
宮田:(笑)。
倉島:「もう復帰しました!」というアピールをしなきゃいけないから。やってるんですけど、見えないんですよ。
宮田:今までの経験値で(笑)。
倉島:「だいたいここら辺かなぁ?」って。
宮田:それはそれですごいですね。なるほどですね。
人のつながり全部が“線”としてつながっている
宮田:けどやっぱり今までの、仕事としての、それこそさっきおっしゃられたように「フリーになったからといって、いきなり辞めて、全部自分で」というワケじゃなくて。今までの仕事と一緒にやってきた仲間とかを残しつつ、若干働き方の幅を広げるために、会社の所属じゃなくてフリーになってというかたちをとった、というぐらいの感じですかね。
倉島:そうですね。なんかスパッと「しません」という線引きは、性格的にもそうですけどあんまりおすすめはしないというか。そこまでの人脈とかは大事にしつつのほうがええんちゃいますか。
宮田:そうですね。今までのヒストリーの流れも全部そこだとは思ってはいまして。それこそトラックレコードのところに書いたんですけど、さっき出てきた『ウルトラかいじゅう絵本』シリーズだったりとか、他のゲーム外の仕事とかもいろいろやっていくようになるというところで。
けっこう過去の作品のファンだったりとか、過去にお仕事を一緒にやった人というところから仕事の相談が来るようになってというところが、けっこう多いという話はありますね。
倉島:そうですね。『ウルトラかいじゅう絵本』はまず、もともとバンプールで働いていた若手の、企画の谷口(隼)くんというスタッフの人が、かなり後なんですけど、(彼の)知り合いがそういう企画を立ち上げようとしていて。「倉島さんはウルトラマン好きだったから」といって、つなげてくれたりとか。
あとは『moon』を小学校の時に遊んでた子がおっきくなって、ゲームとかを作るようになったりとかして。「倉島さんに」とかってお仕事をもらったりとか「もともとファンだったんで、お願いできますか」とか。あとは、あれですね。「結婚式のウェルカムボードを描いてくれませんか」とか、そういう昔のつながりはありました。
宮田:それこそOnion Gamesさんで先ほどお名前が出てきた木村さんも、そもそもずっと『moon』だったりとか……。
倉島:長いですよ。もうスクウェアの同期入社だから、もう27年ぐらいですかね。
宮田:けっこう全部が線としてつながっている感じですよね。人のつながりが。
倉島:そうですね。
“今まで”を生かすために、幅を広げる
宮田:というところが、やっぱり好きなことをやれる環境というところで。題目として書いてはいつつも「全部を捨てて自由にいくんだ!」というかたちじゃなく、今までのところを生かしつつ……生かすというか大事にしつつ。
逆に言えば、それをさらに生かすために幅を広げるのが、今の状態というかたちですかね。
倉島:そうですね。つながりは、ずっと大事だと思いますよ。
宮田:これからも、この後のクリエイター人生としても、このつながりを大事にしつつ……。
倉島:つながりと、あと血圧をあまり上げないように、体を……。
宮田:大事ですね(笑)。
倉島:あまり家系(ラーメン)は……もう食べてないですからね。
宮田:なるほど。確かに。確かにすごく相性が悪そうですね。
倉島:うーん、ガンッと(数値が)上がりますね。毎朝血圧を測ってるんですけど、ガンッと上がります。大好きなんですけどね。
「若いもんには負けられない」
宮田:なんかこの後、めちゃくちゃやりたい仕事とかっていうのは、なんかあったりするんですか?
倉島:めちゃくちゃやりたい仕事は……まぁ、もちろんゲーム。今作っているゲームを、おもしろく完成させるというのはあるんですけど。あれなんですよ。自分で物語を書けないってさっき言ったじゃないですか。けれども、自分で絵本を作ろうとはしているんですよ。自費で。
宮田:それはめちゃくちゃ楽しみですね。
倉島:そう。だから描いちゃペッしてというのをやっているので。生きているうちにやりたいなぁ。あとタロットカードも。それも、なんか描いちゃ……。
タロットカードも今まで2回ぐらい作ったんですけど、ゲームの中でね。そう。だから年取ったバージョン作ろうかなと思って。
宮田:まだまだやりたいことが、次から次へと。
倉島:そう。若いもんには負けられない。
宮田:(笑)。そう、そう、Wikipedia見ると、奥さんともユニットを組まれてやられているとか。
倉島:ユニットというかね。奥さんはすごくきっちりしているんで、私がこう適当にペロペロって絵を描いてやっていると、すごく嫌な顔をしますね。
宮田:(笑)。そういった話聞くと、楽しそうだなって感じがありますね。
倉島:そう。奥さんのプチ情報なんですけど、今言ってもいいですか?
宮田:大丈夫です(笑)。
倉島:奥さんも絵本とか描いてて。ディーン・フジオカさんっていう役者さんが、4月9日に絵本(『ふぁむばむ』)を出されるんですけど、それの絵をやっているので、よかったら。
宮田:ぜひ(笑)。クリエイター一家ですね。
倉島:……はい。
宮田:(笑)。という感じの倉島さんのヒストリー人生がいまだに続いているというところで、また、今後の活躍も楽しみにし続けているかたちですね。
倉島:はい。ありがとうございます。
<続きは近日公開>
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