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Monday, April 20, 2020

在宅生活に疲れたあなたへ勧めたい──いまNetflixで観たい映画3選 - GQ JAPAN

気持ちを軽やかに

屋内にこもらざるをえない日々、ネットで映画を観るとしたら、華やかでめまぐるしい大型アクション映画? アクティブな登場人物が「元気を出せ!」と活を入れてくる映画? いやいや、いまはそれどころではない。もはやこっちはよれよれだ。濃すぎず重すぎず、適度に目に楽しい映画、気持ちを軽やかにしてくれる映画はないだろうか。「在宅疲れ」でそんな気持ちになっている人に向け、Netflixで現在観られるなかから、3本の映画を選んでみました。観逃している方はぜひこの機会に。すでに観たことがある人はぜひもう一度。

© DREAMWORKS SKG/AMBLIN / MORTON, MERRICK / Album / AFLO

『ターミナル』(2004)

新作映画撮影中のオーストラリアでCOVID-19感染がわかり、隔離入院となったトム・ハンクス。その後快復して無事帰国しました(よかった!)が、この人は出演作のなかでも閉じこめられたり帰国できなくなったりしていたなあと、思い出しながら心配していたファンも多かったことでしょう。無人島生活を余儀なくされる『キャスト・アウェイ』(2000)。祖国の政変でビザが失効し、NYの空港で足止めを食ってしまう『ターミナル』(2004)。どちらもすぐれた監督の手による作品で、現在Netflixで観られますが、今回はスティーヴン・スピルバーグが監督した『ターミナル』のほうを。

どうしてもサスペンスやスペクタクルの側面に注目されがちなスピルバーグ作品のなかで、「ヒューマンドラマ」や「コメディ」に分類されるだろう『ターミナル』は、話題になることがあまり多くないかもしれませんが、この作品もまた、スピルバーグの見事な話術が楽しめる映画です。トム・ハンクス演じるヴィクターは、先ほど述べた事情により、空港から出られなくなってしまった男。JFK空港という超大空港ですから、おうちに閉じこめられるよりはずっとましかもしれませんが、最悪なことに彼は英語がまったくできないため、孤立感はとてつもないものがあります。助けてくれる人も見つからないなか、ヴィクターはどうやって生き抜くのか。やがて周囲の人たちとのつながりが築かれていく過程も感動的です。きらきらと活気ある空港(いまとなっては懐かしい光景ですね……)の描写が素晴らしく、夜間のシーンでは、『シンドラーのリスト』(1993)以後のスピルバーグを支えつづける撮影監督、ヤヌス・カミンスキーが本領を発揮し、魅惑的な映像を実現しています。

© 2016 Universal Pictures, Warner Bros. Entertainment Inc. and RatPac-Dune Entertainment LLC

『セントラル・インテリジェンス』(2016)

「ロック様」ことドウェイン・ジョンソンと、ケヴィン・ハートのコンビといえば『ジュマンジ/ ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)というとても楽しい映画があって、Netflixでも観られますが、そちらは最近地上波でも放送されたので、今回は、観逃している人が多そうな『セントラル・インテリジェンス』(2016)をご紹介。

ハイスクール時代、学園のスーパースターだったカルヴィン(ハート)は、卒業後20年経ったいまではぱっとしない会計士。ある日、ぽっちゃり体形のいじめられっ子から筋骨隆々の大男に大変身したロビー(ジョンソン)と再会します。学校でただひとりやさしくしてくれたカルヴィンを崇拝し、わんこのようになついてくるロビーですが、彼の現職は実はCIA諜報員。国家存亡に関わる大事件にカルヴィンは巻きこまれていきます。

といってもシリアスなスリラーではなく、アクションありのコメディ映画。正直、あまりうまく行っていない部分もあるのですが、主演コンビは愛嬌たっぷり、次々投入される旧作映画ネタにも笑わされます。しかし、たわいなく楽しませてくれる一方で、この映画には、ひどく胸を衝かれるシーンもあります。それは、無敵の男に成長したかに見えるロビーが、実際は、ハイスクール時代のいじめによるトラウマを、まったく克服できていないことが明らかになる場面です。

『ジュマンジ』もそうでしたが、最近のドウェイン・ジョンソンを見ていると、「10代の少年少女にこういう映画を観てほしい」という基準で作品選びをしているのではないかと思えます。では、少年少女ではなくなってしまった人間にとって、これらの映画が不要かといえばそうではない。記憶のなかに押さえこんでいた子どものころの自分を肯定され、抱きしめられているような気持ちになる人もいるのではないでしょうか。あなたがどの性別の身体を持って生まれたとしても、つらさを感じない人間なんていない。泣きたいときは泣いていいんだ、弱さを見せてもいいんだと。それは、10代のころうつ病に苦しんでいたことを公にしているドウェイン・ジョンソンその人が、心から発しているメッセージでもあるでしょう。

© Columbia Pictures/courtesy Everett Co / Everett Collection / AFLO

『マネーボール』(2011)

最後の1本は、ひねったエンディングでありながら奇妙な爽快感を残す映画。開幕日未定の今シーズンの大リーグの代わりに観てくださいというわけではありませんが、スター選手不在のまま20連勝を記録した、オークランド・アスレチックスの2002年のシーズンを、GMの視点から描いた『マネーボール』(2011)です。野球映画とは思えぬ静謐さに包まれた異色作ですが、ちゃんとスポーツ映画らしい盛り上がりもあります。

経験と直感に頼る従来のチーム作りを全否定し、すべてを数値化して統計学で戦おうとする主人公のGMのやり方は、痛快であると同時に、見方によってはあまりに強引でもある。彼がなぜそこまでかたくななのか、その理由を考えるのもこの映画を読み解く面白さではありますが、それ以上に味わいたいのは、ともすれば無味乾燥になってしまいそうなこの物語にあたたかな人間味をもたらしている、GM役のブラッド・ピットと、そのアシスタント役のジョナ・ヒルの存在です。脇役も、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト、クリス・プラットらが顔をそろえる贅沢さ。

そしてさらに、クリストファー・ノーラン監督ともしばしばコンビを組んでいたキャメラマン、ウォーリー・フィスターによる撮影と、積極的に静寂を利かせためりはりある音響が素晴らしい。ラストシーンに至るころには、しみじみとした感慨が押し寄せます。

篠儀直子(しのぎ なおこ)

PROFILE
翻訳者。映画批評も手がける。翻訳書は『フレッド・アステア自伝』『エドワード・ヤン』(以上青土社)『ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル』(DU BOOKS)など。

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