先日、メーカーが異なる6台を並べて順番に試乗する、という企画があった。いろんなクルマに一気に試乗することができて、とても楽しい企画だったのだが、クルマが変わるたびに、運転席に座ったあと、キョロキョロと「スタートスイッチ探し」をしなければならず、戸惑った。
昨今は、スマートキーが当たり前になったが、スタートスイッチの位置はメーカーごとにバラバラ。左右どちらかのハンドルの裏側付近にあることが多いが、なかにはセンターコンソール付近にあるクルマも。同じメーカーのクルマであっても、スイッチの位置が微妙に違っていたりもする。
スタートスイッチだけでなく、ウインカーや、ステアリングホイールの位置を調節するチルト調整やテレスコピック調整も位置や形が異なる。今回の筆者のように、慣れないクルマに乗る際は、戸惑うことも多い。統一規格となっていてもよさそうなものだが、なぜ統一されないのだろうか。
文/吉川賢一
アイキャッチ画像/©Love the wind – stock.adobe.com
写真/TOYOTA
エンジンスタートスイッチは、メーカーごとの考えでそれぞれ決めている
ドライバーが使用するすべての操作スイッチのレイアウトは、もちろん適当に配置されているものではなく、これまで積み重ねてきた知見や人間工学に基づき、スイッチのレイアウトを専門に設計する開発エンジニアによって、決められている。
ドライバーが正しいドライビングポジションを取った状態で、ストレスなく各種操作ができるよう、シフトノブ、ウインカーレバー、ワイパーレバー、ウィンドウ開閉スイッチ、エアコン操作スイッチ、ナビゲーション操作スイッチ、ボリューム調整スイッチなど、使用頻度が高く、重要度が高いものから順番にレイアウトする。ただし、レイアウトする位置については決まりがなく、メーカーごとの考えでそれぞれ決めている、というのが現状だ。
ただし最近のトレンドでは、センターコンソール側にスタートスイッチがあるクルマが多くなったように思う。以前、内装設計の経験者から聞いた話では、センターコンソール側にスタートスイッチがあれば、スタートスイッチを押してエンジンをかけたあと、そのまま左手でシフトレバーを操作してドライブレンジに入れ、サイドブレーキを解除、といった、運転前の操作を「左手のみ」で操作できるから、だそうだ。いちいち右手と左手を使い分けなくてもよいので、ストレスも少なく、また速やかに発進できるというメリットもあるのだろう。
ステリングコラムの右側へキーを差し込んで回転させてエンジンをかけていた時代は、日本人の約9割が利き手である、右手で操作できるよう、ハンドルの右側に位置していた。だが、昨今のプッシュスイッチでは力を入れる必要はないため、右手側でも左手側でもよくなったそうだ。
輸入車とウインカーが逆なのは、日本が「ISOに従っていない」から
輸入車に乗ると、誰もが一度は間違えるのが、ウインカーとワイパーの操作ミスだろう。筆者も度々やらかす。近年は、日本で販売される輸入車の多くが、右ハンドル仕様となっているが、ウインカーは左のまま。これは、ISO(国際標準化機構)の、「ハンドル位置に関わらず、ウインカーは左側」の規格に従っているためだ。ちなみに、BMWが主体となって共同開発した、トヨタの現行スープラは、右ハンドルだがウインカーは左側だ。
ではなぜ、国産メーカーのクルマは右ウインカーなのか、というと、日本で売られている日本車はJIS(日本産業規格)に規定されている「右ハンドル・右ウインカー」を採用しているため。日本のルールは、世界的に見れば「イレギュラー」であり、輸入車メーカーの本音としては、「左側通行の国で、左ハンドルが運転しづらいのはわかるが、ウインカーはISO規格のままでいいのでは」というところだろう。
ちなみに、左側通行を採用するのは日本のほか、香港、イギリス、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、ケニア、スリランカ、バングラディッシュ、パキスタンなど、およそ55か国。世界の国に対しては、約4分の1程度と少数派だ。世界の大半の国では、右側通行であり、それに従ってISOで決められているものであり、少数派の日本としては、仕方のないところだ。
なお、日本車メーカーが海外で新車販売する場合は、きちんと左ハンドル・左ウインカー仕様をつくっている。日本固有のJISのおかげで、今の右ハンドル、右ウインカーのルールなっていることは、知っておいて損はないだろう。
次ページは : チルト&テレスコロック機構は、サプライヤーによる違い
からの記事と詳細 ( エンジン始動スイッチも左右バラバラ? 車の操作系が統一されない納得の事情 - ベストカーWeb )
https://ift.tt/3FmQPBh
No comments:
Post a Comment