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Tuesday, June 1, 2021

シンスペクティブ・エンジニアインタビュー(1)-- 衛星地上システム ソフトウェアエンジニア・畑宏和氏 - 独自

シンスペクティブ・エンジニアインタビュー(1)-- 衛星地上システム ソフトウェアエンジニア・畑宏和氏

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SAR衛星(合成開口レーダー衛星)の開発・運用することで地球観測データを取得し、その膨大な地球観測データを、データサイエンス・機械学習を用いて解析し、政府や企業にソリューションとして提供している株式会社Synspective(シンスペクティブ、以下シンスペクティブ)。2020年12月15日には、自社で開発したSAR衛星「StriX-α」を、Rocket Lab社のElectronロケットに搭載し、ニュージーランドの発射場から打ち上げた。

今回は、躍進を続ける同社を支えるエンジニアの方々5人にインタビューした内容をお届けしたい。

第1回は、衛星地上システム ソフトウェアエンジニアの畑 宏和(ハタ ヒロカズ)氏が語ってくれた内容を紹介したい。

【関連記事】「【「Synspective」その後】SAR衛星「StriX-α」の打上げに成功、社員数は約100人に--次の目標は30機の衛星のコンステレーション構築」

目次

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1. 衛星の仕様に合わせて、その枠組みの中で求められる機能を実現

私は、地上システムの開発をしています。衛星に対して指令を出したり、衛星から受信したデータ処理を行うシステムを開発したりしています。

前職は会計ソフトの企業にいて、ウェブアプリケーションの開発をしていました。衛星のソフトウェアというのは、やはり一般的なアプリケーションとは違いがあります。私が今まで携わってきたウェブアプリケーションでは、コストが許す限りは制約をほとんど気にすることなく、実現したい機能を開発していき、リソースが足りなくなれば追加すればいいという考え方でした 。しかし、衛星の場合は、 制約が非常に 厳しくのしかかります。衛星の仕様に合わせて、その枠組みの中で、求められる機能を実現しなければなりません。ここが難しく、挑戦しがいのあるところです。

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2. 英語を普段から使わざるを得ない環境に自分の身を置きたかった

会計ソフトの会社から宇宙ビジネスの会社の転職ということはあまり気にしませんでした。前職では5年も勤め、ウェブだけで完結するソフトウェア開発に少し飽きが出てきて、ハードウェアと絡むソフト開発をやってみたいと思うようになりました。それと、社内で英語を使わざるを得ない環境の会社というのも条件でした。

仕事とは別に、私はオープンソースのソフトウェア開発もしています。この場合、コミュニケーションはどうしても英語になります。GitHubなどでのやり取りのような非同期コミュニケーションであればいいのですが、チャットのような同期コミュニケーションではどうしてもついていけませんでした。言語能力だけでコミュニティに参加できないのは悔しいなと思って、英語を普段から使わざるを得ない環境に自分の身を置きたかったのです。

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3. 採用面接では、自分の経歴やスキルをありのままを見せることが大切

転職活動をする中でシンスペクティブとの出会いがありました。最初は電子メールでやりとりをしました。私はひねくれていて、担当者が私の経歴 をちゃんと読んでくれていることを確認したかったので、「返信をくださるなら、タイトルにこういう言葉を入れてください」と本文に書いておいたのです。そうしたら、ちゃんとその通りのメールが返ってきました。多くの企業が無視をする中で、私の経歴 をしっかりと読んでくれていたのです。

私は、採用する方も採用される方もお互いが納得せずに入社を決めるのは避けたいと考えています。自分の経歴やスキルも大きく見せるのではなく、ありのままを見せて、こんなのでよければ採用してください、それでいいと言われて入社したい。その方が、入社後もうまくやっていける安心感が得られます。

4. 毎日、新鮮なことと出会えるシンスペクティブの環境はとても楽しい

実際、入社直後は、衛星の専門知識がないために、できる業務は限られていました。でも、専門知識は必要なく、ウェブアプリのスキルだけでできる業務からアサインしていただきました。その業務をこなしながら、専門知識を身につけていきました。

業務システムを開発するエンジニアの仕事の半分は、対象業務に対する理解だと私は思っています。対象となる業務に対する理解がなければ、自分が納得するシステムは作れません。それは当たり前のことで、衛星のことは、かなりの時間を使って学びましたが、それは当たり前の業務のひとつで、ことさら「勉強した」という意識はありません。それに面白いんです。「そんなことで軌道計算できてしまうのか」とか「そんな仕組みで衛星の姿勢を制御するんだ」という面白い話がどんどん出てきます。

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私は、自分が好きになれて、面白いと感じることをやって生きていきたい。基本的に飽き性なので、日々、同じことの繰り返しにならないように工夫をしています。ですから、毎日、新鮮なことと出会えるシンスペクティブの環境はとても楽しいですね。

5. システムを止めずにメンテナンスや新しいバージョンへの置き換えすることに挑戦

一方で、大きな課題にも挑戦しています。衛星は24時間動いているので、一般のウェブアプリケーションのように日曜日深夜に停止をして、メンテナンス時間を取るということができません。現在は1機なので、地球の影に入った時に、システムを止めてメンテナンスをすることも可能ですが、台数が増えてコンステレーションとなると停止することができなくなります。

システムを止めずにメンテナンスをしたり、新しいバージョンのものに置き換えたりしなければならない。さらに、衛星そのものも改善されていくので、世代が異なれば仕様も違ってきます。それにも対応できるシステムにしなければなりません。そこは頭を悩ませています。やらなければならないことであり、やってできないことではありません。

6. いろいろな文化を持った人がいるため、自分の考え方には固執しない

シンスペクティブには、いろいろなバックグラウンドの人が集まっています。ソフトウェアからハードウェア。前職は大企業からベンチャー。さまざまな業種。私は今までウェブアプリケーションの開発をやってきたので、周りはウェブアプリケーションを開発するエンジニアが多かったです。同じような文化や考え方を持っている人の中で仕事をしてきました。

でも、シンスペクティブではいろいろな文化を持った人に囲まれて、考え方やプライオリティの置き方だとかがそれぞれに違っています。ですから、自分に戒めているのですが、自分の考えだけで「これがいちばんいいに決まっている」と決めつけるような考え方はしないようにしています。

例えば、ものすごく身近なところでは、書類を保存するディレクトリの作り方がそれぞれに違う。スラックを使ったことがない人がいる。それを「スラックを使うべきです」と言って、半分強制で導入してもうまくいかない。そこをどうやって、段階を踏んで、業務フローを効率的なものにしていくか、全員の業務を楽で便利なものにするのか。そういうカオスのようなスタートアップ状態の中で、業務を作っていくのはとても楽しい仕事です。それは突き詰めれば私の自己満足なんだと思います。でも、それが他のメンバーの仕事を楽にし、業務全体の効率を高めることにつながる。それでみんなが喜んでくれる。それがまた自分の満足につながっていきます。

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7.日々の業務の一つ一つに大きなやりがいと喜び

衛星の打ち上げ成功、最初のデータ取得成功、最初の顧客との契約成立。そういう節目節目のできごとはもちろん嬉しいです。でも、私はもっと粒度の小さな嬉しさを日々感じています。自分の開発したシステムが少し改善されました、精度がほんの少し上がりましたという日々の成果に喜びを感じていますし、そういった些細なことも嬉しいことに思うことで毎日が楽しいと思いたいです。私は自分が求める働き方や生活のしかたができる環境にいたかったので、それが叶えられるように色々な選択をしてきました。責任に対するプレッシャーはあってもストレスはない。仕事が日々楽しく感じられる。自分の特性を理解して認めてくれる仲間のいる会社を探して、シンスペクティブと出会いました。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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