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Monday, August 1, 2022

【ワークライフ】 社内で強制される「お楽しみイベント」がなくなる時……パンデミックで慣行に変化 - BBCニュース

The death of 'mandatory fun' in the office

画像提供, Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミックによって、社内で行われる誕生会にカップケーキを用意したり、チームで飲みに行ったりという強制的な「お楽しみ」活動に終わりの時が来た。多くの社員がほっとしている。

ピザパーティーほど楽しいものはないというのは、誰もが認める真実だ。アイスクリームを囲む会を除けば。遠足もとても楽しいし、楽しい課外活動も捨てがたい。

小学3年生にとっては。

しかし大人になって、会社のチームの育成活動や終業後の飲み会、会議室での祝賀会などに強制的に参加させられ、拒否すれば「協調性がない」と言われるのは、最悪の事態だ。

この2年余りでオフィス文化が完全に刷新された結果、パンデミック前にあった社内の強制参加行事は実質的に消え去った。もちろん、バーチャルで開催されるチーム育成活動や、Zoom飲み会には、多くの人が参加しただろう。しかし毎月の誕生日祝い、勤務時間外の飲み会、障害物競走への参加などは、ほとんど免除されている。

そして今、一部の企業が社員をオフィスに呼び戻したとしても、職場での「行事」は以前とは違うものになっている。オフィス勤務とリモートワークとのハイブリッドな勤務環境では、全員を一堂に集めるのは難しい。さらに、パンデミックを経て物事の優先順位が変わった結果、多くの人が仕事が終わったらできるだけ早く家族のもとに帰りたいと考えている。やる気アップのためのレーザー鬼ごっこなど、知ったことか。

だが、強制的なオフィスパーティーはもう終わりかもしれないが、新しいタイプの社内行事が、これまで以上に重要になっている。社員が実際に参加したいと思うようなイベントは、チームの絆を深めるのに有効だ。ほとんどの時間をリモートで働きたいという人に、同僚と再会する正当な理由を与えることもできる。賢い企業は、従業員が実際に好む「行事」は何なのか、どういうイベントなら社員が、無理やりにではなく、実際に出たくて出てくれるのか、答えをみつけようとしている。

パーティーは我慢できない

何十年にもわたり、企業は良くも悪くも職場を楽しい場所にしようとしてきたと、カナダ・ヴァンクーヴァ―でコンサルティング企業「プレイフィシエント」を経営しているポール・ロプシンキー氏は指摘する。

「ここ20年、25年ほどの間で、これまで誰も考え付かなかったような『福利厚生』が職場に導入されてきた」とロプシンキー氏は述べた。ビーンバッグの椅子、色鮮やかなラウンジ、アーケードゲームや卓球台、ビールサーバーのある共有スペースなど、例を挙げればきりがない。

「こういう、職場というよりは幼稚園教室に近いオフィスを、『キンダーガーデン・オフィス(幼稚園の事務所)』と呼んでいる。大手ハイテク企業から始まった文化だが、みんなが真似し始めた」

The death of 'mandatory fun' in the office

画像提供, Getty Images

しかし、こうした手当には常に何か陰湿なものがあると、ロプシンキー氏は付け加える。

「この文化の実際の目的は楽しみではなく、社員を長く職場に滞在させることだ。卓球台があって、ビールサーバーがあれば、仕事後も職場に留まるだろうと思われている。決して義務ではないが、もしこうしたものを拒否すれば、『チームプレイヤーではない』と、とがめられることになる」

巨大なボールプールなどがあるオフィスでなくても、強制参加行事の風習は長く続いていた。一部の外向的な人々、社交の専門家のような人々は純粋に楽しんでいたかもしれないが、そうでない人たちはずっとこれにいらだっていた。会社役員のリーダーシップコーチを務め、従業員との接し方について共著のあるエイドリアン・ゴースティック氏は、「誰も『今日はアロハシャツの日です!』と言われたくないのに、参加しないとのけ者にされてしまう」と話した。

ロプシンキー氏は、責務から外れた参加は「企業カルト」を作り出すと述べる。

「それはほとんど教化に近い。最終的には、偽の笑顔を貼り付けて、『ええ、もちろん素晴らしいですよ、こういうお楽しみ、大好きなんです』と言うようになる。表面の調和の下には多くの不調和がある、そういう文化だ」

デスク仲間、会議室での集まり、ワーキングランチ……パンデミックがこうした職場にまつわる虚飾を取り払ったおかげで、仕事にはそうしたものが必ずしも必要ないことに多くの人が気づいた。また、ワークライフ・バランスの問題が前面に押し出されたことで、従業員が雇用主に対して新しいレベルの柔軟性を求めるようになった。

他のあらゆるものと同様、社内行事もパンデミックのおかげで変化を迫られた。端的に言えば、人々はやりたくないことをやらないようになったと、ゴースティック氏は話す。

「パンデミックによって私たちは全体的に少し怒りっぽく、またシニカルになったと思う。面倒だと思うことについて、ともかく我慢しなくなった」

しかし、だからといって同僚同士のつながりがなくなったわけではないとロプシンスキー氏は指摘する。単に、本当に楽しいと思えることでつながりを持ち始めていると。

「裏を返せば、パンデミックによって従業員主導のイニシアチブは増加傾向にある」

チーム育成のイベントや「行事」はトップダウンで行われるものではなくなった。

「社員がZoomでヨガ教室を開いたり、同僚のために料理教室を開いたりする。興味深いのは、『こうしなければならない』ではなく、『みんなは本当は何をしたいのか』という方向にシフトしている点だ」

ゴースティック氏も、パンデミックが進行にするにつれ、顧客の間で似たような傾向が始まったと話す。アメリカのとある大企業では、Zoomで週1回の「wine-and-whine(ワインと愚痴)」の会が始まったという。

「ワインと愚痴の会は、金曜日の午後4時ごろに始まる。飲みたければ飲めばいいし、そうでなくてもいい。ただし、その週の愚痴を言わなくてはいけない」

「時間は1時間で、みんながひどい顧客や、しゃくに触る上司について話したり不満を漏らしたりする」

このワインと愚痴の会は、有害でネガティブな環境を作るというより、従業員の気晴らしとなり、1週間のフラストレーションを吹き飛ばし、週末を楽しむ前段となり、究極的には週明けのリフレッシュを促しているとゴースティック氏は付け加えた。本物の楽しみとして、在宅勤務を終えてオフィスに戻った後も続いている行事だという。

「企業は、より本物に近い形で人々を集める方法を模索する必要があると分かっている」

「単にパーティーを企画するのではなく、行事を意義のあるものにし、人々が実際に参加したくなるようなものにすることが大事だ」

オフィス復帰に良いきっかけを

2年以上の在宅勤務を経験した今、多くの人がオフィスにはもう戻りたくないと思っている。2022年にピュー研究所が行った調査によると、アメリカでは在宅勤務をしていた人の60%近くが引き続きこの働き方を選びたいと回答した。イギリスではこの割合がさらに高い。

ゴースティック氏によると、在宅勤務からオフィスに戻るよう指示された従業員は、あっさり辞めていく傾向がある。そのため、企業には人々を「誘い戻す」手法が必要だという。

実際、企業は努力している。フードトラックから無料のTシャツまで何でも提供し、米グーグルに至っては、歌手リゾさんの特別コンサートを開催した。だが、こうしたお祭り騒ぎは多くの人を引き付けるかもしれないが、自分の机に戻るころにはその熱気も薄れてしまう。

ゴースティック氏は、「私の顧客の中には、パンデミック中に大きな新オフィスを建て、数カ月前に大規模なオープニングパーティーを開いたという人がいる」と話した。

「そこには従業員の90%近くが集まった。みんな楽しんで、再会に興奮していた。しかし月曜日にオフィスに来たのは10%かそこらだった。同僚にものすごく会いたがっていても、仕事をするのはリモートがいいというわけだ」

The death of 'mandatory fun' in the office

画像提供, Getty Images

きらびやかなパーティーは最初こそうまくいくかもしれないが、企業に必要なのは長期的な社内行事の戦略だとゴースティック氏は話す。従業員が参加したいと思うに十分な意味と共に、オフィスに戻ってもらうのに十分な説得力のある楽しみだ。

「これは、『さあみんな集まって。今日はスタンの誕生日だから、ほらカップケーキがあるよ』という以前のやり方ではなく、もっと有意義な形で集まって一緒に過ごす、そういう変化だ」

つまり、先述の「ワインと愚痴の会」のような、パンデミック中に人気で有意義だったイベントを続けながら、勤務時間後まで居残らなくて良いイベント、別の場所で使う時間やエネルギーを消費しなくて良いイベントを企画することが、意味を持つ。また、それでも来ない人もいることを理解し、来ないからといって悪く思わないことも必要だ。

方程式のもう片側はもちろん、参加を強制しないこと。

「罪悪感も義務もないものにするべきだ」とゴースティック氏は説明する。

「参加しないという選択肢を与えなくてはいけない」

ロプシンキー氏は、こうした行事はマネージメント側にも利益になると付け加える。社内行事の究極の目的がチームの絆を深めることにあるなら、誰も参加しようとしない状態よりもはるかに有効だからだ。

「結局、何かを一緒にすることが一番前向きな影響になる。強制されるのとは違い、チームの絆が自然に作り出される」

ゴースティック氏は、多くの人がパンデミック後、今まで以上に楽しいひと時や、誰かと一緒にいることを求めていると話す。

「だからこそ、オフィスで長年続いた、無意味でばかげた『お楽しみ』イベントはもう過去のものだ。私たちはおそらく今まで以上に、時間がいかに大切か気付いたのかもしれない。上司が従業員の時間を使いたいなら、有意義な使い方にしなくてへあならない」

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