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Friday, September 16, 2022

Case.13 DJI Mini 3 Pro、縦向き動画の楽しさと制作のポイント。Z世代の映像制作ワークショップから見えること[田口 厚のドローンプロジェクト日誌] - DRONE

Case.13 DJI Mini 3 Pro、縦向き動画の楽しさと制作のポイント。Z世代の映像制作ワークショップから見えること[田口 厚のドローンプロジェクト日誌]

TikTokやYouTube ショートなど、縦型コンテンツを目にする機会が多くなってきました。先日発売されたDJI Mini 3 Proでも撮影できるようになったのは記憶に新しいところです。しかも、8月18日のアップデートで人気の高機能プロポDJI RC ProでMini 3 Proを操縦できるようになり、機体単体での販売もされていることから新たに購入しようという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、Mini 3 Proで撮影する縦向き動画の楽しさについて考えてみたいと思います。

ドローン空撮の縦向き動画撮影はやっぱりMini 3 Proがいちばん!

ドローンによる縦型コンテンツは、もちろん今までもなかったわけではありません。しかし、Mini 3 Proでは、縦向き動画撮影がこれまでよりも格段に楽になりました。

まず、画角が合わせやすくなったことが大きい。これまでは4Kまたはそれ以上の解像度で横画角撮影してものを縦画角にトリミング(切り出し)して縦向き動画を作成していました。それにより、被写体を画面中央にほぼ固定しないと撮影が難しく(被写体を動かすとトリミングの際に画角外にはずれてしまう場合があるため)、縦画角の中での構図づくりが細かくできませんでした。

Mini 3 Proでは、物理的にカメラが縦向きに変更できるので、プレビュー画面でも縦構図のまま撮影ができます。そのため、縦構図の細い横幅の中でも細かい構図づくりができ、意図的な画角をつくることが格段に楽になりました。

また、横画角で撮影したものをトリミングすると解像度は撮影時よりも落ちてしまうのですが、Mini 3 Proの場合はカメラの解像度を使い切ることができるのも魅力的です。

縦向き動画コンテンツが注目されている

では、なぜ縦向き動画が注目されているのでしょうか。スマホ画面いっぱいに表示される…だけではなさそうです。

NHK「クローズアップ現代」の大学との共同実験によると、人間の有効視野に近い画角の縦向き動画は視線を動かす必要がなく、気楽に見ていても内容が把握しやすい。また、脳のヘモグロビン量から集中状態が長く続いていることがわかるのだそうです。ただし、つい集中しすぎるあまり、1つの縦向き動画を見続けられる時間は10分が限界だとか。

つまりは、縦向き動画はスキマ時間や"ながら見"で利用されるSNSで注目を集めるには相性がとてもよいコンテンツであることがわかります。

ネイティブなZ世代とMini 3 Proで縦向き動画ワークショップで検証

では、縦向き動画ならではの動画をどう作ったらよいのでしょうか。青山学院大学社会情報学部の授業で筆者がワークショップをさせていただく機会がありましたので、そちらからヒントを探したいと思います。縦向き動画やスマホにネイティブな「Z世代」と言われる年代の学生がどのような映像を作ってくれるのか、とても楽しい企画となりました。

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チームに分かれてアイデアを出し合いながら動画作品制作を開始!
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とっかかりは少し悩んだ雰囲気もあったものの、ドローンが飛んで撮影した映像を見るとアイデアがどんどんふくらんできます
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ワンカットでも2階席も使って高低差がある場面展開もあるのはドローンによる映像作品ならではの撮影風景

ワークショップは、体育館で4名1組のグループとなり、1時間の撮影活動の中でDJI Mini 3 Proをカメラにワンカットで構成される縦向き動画を撮影してもらいました(Mini 3 Proの操縦・撮影・安全管理はスタッフ)。制作テーマは"ドローンでバズる縦向き動画を作ろう"。ちょっと驚く、クスッと笑える…そんな動画を作ることをテーマとしています。

体育館での撮影なのでドローン空撮が得意とする雄大な自然はありませんが、その分、各チームとも自分たちをキャストとするストーリーに工夫を凝らした映像を作成してくれました。その中から2つ映像をご紹介したいと思います。

二度見するおもしろさを野球で演出!

野球のホームランをボールの視点で撮影。Mini 3 Proをボールに見立ててピッチャーの投球⇒バッターがスイング⇒ボールが回転しながらスタンドへ⇒観客がキャッチ…という映像になっています。この映像のポイントは、実は打ったバッターとスタンドでキャッチした観客が同一人物であるということ(学生のプライバシーの関係で顔にボカシを入れてあります)。ワンカットなのに距離の離れた最初と最後で同じ人物がいるというちょっと二度見しなくなる作品となっています。

記事公開にあわせて音楽を筆者でつけています

なぜこのような作品を作ることができたのか。青山学院大学といえば箱根駅伝でも6度の優勝を誇る強豪校。本人も駅伝部というその足を使った簡単なトリック撮影です。下記のメイキング動画もいっしょに見ていただくとさらにおもしろいかと思います。

メイキング映像。バッターがボール(Mini 3 Pro)を打つと同時にスタンドへ向かってダッシュ!

狭い画角をうまく使った先生のサンプル映像

学生ではありませんが、ワークショップ内で先生が遊んでくれたサンプル映像です。くるくるとひとりの先生の周りをノーズインサークルしながら撮影するMini 3 Proですが、一瞬画角が外れると先生が別人になっています。

先生が素敵な音楽も付けてくれました(笑)

もちろん、これは画角が外れた瞬間に先生が入れ替わっているわけですが、このような縦向き動画の画角の狭さを逆手に取った映像もおもしろいですね。こちらもメイキング映像がありますので撮影の裏側もご覧ください。

メイキングは早回し再生で。死角をうまく使った画面展開です

Mini 3 Pro縦向き動画の制作のポイント

ワークショップでは、たくさんの趣向を凝らした縦向き動画作品が誕生しましたが、やはり縦向き動画ならではの特徴が見えてきました。ワークショップの開催が屋内ということでキャストがいる前提の撮影となりましたが、縦向き動画の要素は屋外で撮影したときにも共通すると思いますので下記にまとめたいと思います。

一人称的な没入感が魅力的

野球のボール視点映像でもわかるとおり、あたかも自分がその場で見ているかのような画角は魅力的な没入感を演出します。屋外での縦向き動画空撮では、あえて旋回時に画面を傾けたFPVモード撮影や被写体や障害物が画面スレスレに迫りくる臨場感ある映像などと相性がよさそうです。

崖スレスレを60°弱の煽り画角で登るように上昇!最後の右に回り込むカメラワークは余計でした…

"見えない" ことをうまく利用して驚きを演出

横に狭い画角を利用し、余計な情報を省いて見せたいものを大きく直接的に見せたり、見せたいものをあえて隠してから登場させたりするような演出が効果的です。風景全体を見せるような画角ではなく、風景の中のいちばん見せたいポイント(日の出の太陽光や主役の高層構造物、奥に消えていく遠近法の効いた消失点など)に絞った映像を魅力的に見せてくれるはずです。

ストーリーや展開を重視し意図的に撮らないと意味不明な動画に

縦向き動画は、意図の弱い(意図的でない)撮影に向いていないようにも感じました。何をどのように見せたいか…ということを明確にせずに撮影してしまうと、情報量が少ないだけに意味不明な動画になってしまいます。普段、なんとなく上空にドローンを飛行させて絶景っぽい映像を撮っている手法では縦向き動画では機能しません(横向き動画では情報がたくさん入るのでなんとなく撮っても見かたによっては美しく見えるときが多々あります)。

また、ストーリーや展開を意識して撮らないと単調な映像になりがちです。画角が狭いためカメラを動かしにくく、画面に変化をつけるためにはこれも意図的なカメラワークが必要となります。特にパン(横方向のカメラの振り)は注意が必要です。いつもの横向き動画を撮っている感覚でパンをすると狭い縦向き動画には情報過多(いろいろなものが一瞬画角に入っては消える)となり意味不明な動画になってしまいます。

いつもの横向き動画の感覚でカメラワークした例。まったく画角に横幅がないのでパンすると意味不明。このカメラワークならば横向き動画のほうが映像が魅力的になる

逆に縦の映像の動き(チルト)の変化はつけやすいので、縦の動きの変化を活用するか、あえてパンで情報過多になることを映像の構成やアクセントとして活用するなどの工夫が必要です。チルト範囲が広いMini 3 Pro(上方に60°可動、ほかのDJI空撮ドローンは30°)の機能はこういったところのためにあるのかもしれません。

まずはやってみよう!楽しむことが上達のいちばんの近道

いろいろと御託を並べてみましたが、筆者もまだまだ経験不足。こういったことはまずはやって楽しむことが大切です。特に縦向き動画はスマホやSNSでの相性もよいので "意図的に撮った" バズり映像をぜひご自身のSNSに投稿してみてください。いつもりよりもたくさんの「いいね!」がもらえることはまちがいなしです。

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